生活空間から都市空間まで、
時代に応え、未来を拓くYKK AP。

ステークホルダーダイアログ

YKKグループと「自然界の共生」

ステークホルダーの皆様からいただいたご意見を今後の活動に生かしていきます。

2010 年よりYKKグループでは年1回ステークホルダーダイアログを開催しています。さまざまな分野のステークホルダーの皆様からご意見をお伺いし、YKKグループの社会・環境活動に役立てています。第2回目は、2011年4月13日に黒部事業所にて実施されました。富山県立大学 九里 徳泰先生をファシリテーターに、2010年にいただいたご意見に対する活動報告と、YKKグループが持続可能な社会を目指すための4つの取り組みについて、ご意見をいただきました。


<自治体>
黒部市市民生活部市民環境課
課長補佐・環境係長
中谷 松憲 様
<消費者>
富山県地球温暖化防止
活動推進員
稲垣 里佳 様  
<地域>
村椿振興会
副会長
大上戸 久雄 様
<ファシリテーター>
富山県立大学工学部
環境工学科教授
九里徳泰 様
<取引先>
平野工務店株式会社
代表取締役
平野 明 様
<ナチュラリスト>
黒部峡谷ナチュラリスト研究会
事務局長
松木 紀久代 様 
<学生>
富山県立大学短期大学部
専攻科環境システム専攻
松岡 志温 様

■2010年ダイアログでのご意見に対する活動報告

環境負荷低減活動の課題 CSR 経営の方向性や課題
海外を含めたコンプライアンスの向上 社員の意識や倫理観の向上
地下水の使用による近隣地域への影響 植樹の意味と最終目標
低炭素社会への対応 商品を通した社会的責任

海外を含めたコンプライアンスの向上では、各国・地域の法体制・法規制を調査し、それに基づいてYKKグループ独自のガイドラインを設定しました。同時に各国拠点の責任を明確化し、域内での遵法性をチェックできる体制を構築しました。海外での監査も引き続き実施し、昨年はトルコ、中国、インドネシア、北中米で遵法性をチェックしています。

地下水の使用による地域への影響について、循環利用など地下水の使用量削減とともに、2010年度は黒部川扇状地の井戸の塩水化調査を行い、地下水利用の影響を確認しました。YKKが利用している地下水流域に塩水化は見られませんでした。

低炭素社会の実現に向けては、生産設備や空調、照明の高効率化などを進め、スギの木14.5万本が年間に吸収するCO2を削減できました。また、CO2換算は、2010 年から第三者検証を導入し、国際的に認められたルールのもと、営業所も含めた300 拠点すべてのCO2 の排出量を算出しています。第三者検証には排出源や燃料種ごとのデータが得られるという利点もあり、今後のCO2 削減計画立案に役立てる考えです。

社員の意識や倫理観の向上では、YKKグループではクリーン大作戦と称し、工場および公共施設周辺の清掃を行い、美観やモラルの向上に貢献しています。

また、通勤時の右側歩行を徹底するとともに、事業別の時差出勤も実施し、工場周辺の渋滞緩和に成果が表れたと認識しています。東日本大震災に対しては、労働組合の義援金募集に、多くの従業員が協力しました。

2008 年からグループ全体で行っている「YKK Group Tree Planting Day」も、2011年度からは各国・地域に合った植物を複数種類選定して植樹し、生態系を尊重し緑化を進めます。センターパークでは黒部川扇状地の生態系を再現・保存するため、黒部川水系の生態系調査や水中の常時監視、水中映像の公開などを計画中です。

最後に、商品を通した社会的責任に関して、建材ではガラスとサッシを一体化し、性能と品質を保証する商品「APW」を開発しました。10 年保証が特徴となっています。ファスニングでは、アウトドア用品で有名なパタゴニアと商品開発のパートナーシップを結びました。再生PETで作られたリサイクルファスナー「ナチュロン」を提供し、2010 年にはパタゴニアの主要商品すべてがナチュロンに置き換えられています。



■日本水準の技術と倫理感を グローバルで実践することが重要

九里先生(以下先生):YKKグループは「善の巡環」を根幹にグローバル展開を行っています。グローバルな活動に対するYKKグループへの期待など、今後のさらなる取り組みについてご意見をいただければと思います。
稲垣(消費者代表):日本以外の地域に進出する際、地域の雇用拡大など、お互い同等の利益を得られるよう配慮いただくとともに、日本の環境保全や品質に関する事例を海外にどんどん広めていただきたいと思います。
YKK:雇用面では上級職の現地人化が進んでいますし、女性がマネージメントに参画する例も増えています。
先生:注意が必要なのは児童労働です。1997年のナイキの事例では世界中で不買運動が起きました。YKKはチェック機能をお持ちでしょうか。
YKK:採用時に履歴書と卒業証明書を提出させるなど、児童労働をさせないよう制度面から徹底しています。
平野(取引先代表):木の質感が美しく、耐久性に優れた製品「リウッド」は、世界標準となるポテンシャルがあると考えています。アルミの耐火性能の追求など、安全、安心に強みのある新素材の研究開発にも期待しています。
松岡(学生代表):アルミサッシのような自社製品のリサイクルの状況を教えてください。
先生:APWのようにシリアルナンバーのついている自社製品を回収すれば、品質が均一のリサイクル材が確保できますね。そういった計画はありますか?
YKK:将来的にはそれが目標です。また、自社製品ではありませんが、リサイクルアルミは、精錬に要する電気量が新規の約3%程度ですむので、利用を拡大しています。
先生:自社製品のリサイクルは地域社会や地球生態系との共存にも関わってくる課題ですから、技術革新や企業努力を期待します。
松木(ナチュラリスト):地球規模では砂漠化の進行に危機感を募らせています。植林の努力を続けていただきたいと思います。
YKK:YKK Group Tree Planting Dayとして、継続して実施していきます。
先生:各国の拠点がお互いの活動を参考にできるような情報共有も大切ですね。コンプライアンスはただ単に法律を守るだけではなく、企業倫理がその基盤になければならないものですが、YKKには「善の巡環」という大きな倫理基盤があって、それを全世界の事業所に展開しようと強い意思を感じました。ただし文化の違いや距離感から、その意思が薄れていく可能性は充分あります。評価体制を作ることもお考えください。

■低炭素・循環型社会に貢献し、競争力あるモノづくりを期待

先生:YKKは、伝統的に自社内ですべて調達する一貫生産体制のものづくりを行ってきました。また、すべての事業分野において環境政策を推進し、環境に優しく高品質な製品を供給できる「世界共通品質」を掲げています。
YKK:環境監査については地域の責任で行えるようになり、相互監視による相乗効果も期待できる段階にきています。
大上戸(地域住民代表):5 年ほど前、上海ファスナー工場を見学しました。あの機械はどこで作られているのですか?
YKK:ファスナーや建材をつくる機械の開発から製造、またその機械の部品、消耗品の製造までグループ内で一貫して製造しています。世界同一品質で提供するために、同じ機械、同じ材料でつくれる体制が必須だと考えています。
平野(取引先代表):モノづくりは人づくりでもあると思います。世界各国で言葉の壁を乗り越えながら、モノづくりの情熱ややりがいを伝えるために、どのような取り組みをされていますか。
YKK:どんなに性能の高い機械でも、それを生かすのは人間です。そこで新しい機械を稼働させるときは、必ず時間をかけて研修を行っています。
松岡(学生代表):世界共通品質を実現するため、「善の巡環」を取り込んだ人材教育システムを行われていると聞き、素晴らしいと思いました。
中谷(自治体代表):一貫生産体制や世界共通品質を確立するなかで、新商品の開発目標や、特許などの取得に関するロードマップはありますか。
YKK:特許については出願の方法を変え、社員に対するインセンティブを制度化しました。その結果、登録件数も増えました。建材、ファスナーともにさまざまな素材を研究していますが、その視点はやはり環境保全、リサイクルなどが主になっています。
中谷(自治体代表):ありがとうございます。知的財産のマネージメントを戦略的に行ってほしいと思います。
松木(ナチュラリスト):これからの高齢化社会には、誰もが安心して使えるユニバーサルデザインを意識した製品が求められると思います。今回の震災による電力供給の問題は、太陽光発電などへの転換を考えるきっかけになるのではないでしょうか。
先生:ユニバーサルデザインの根本に立ち返って、世界共通化ができるかどうか、ぜひチャレンジをしていただきたいと思います。

■地域住民の声に耳を傾け、協助の精神を発揮

先生:YKKグループ経営理念にある「公正」を強く意識し、本業を活かした社会貢献から、教育や地域の活性化、国際交流のバックアップなど、さまざまな活動が行われています。なかでも地域の人や女性が働きやすい職場づくりへの取り組みが目立ちますね。
YKK:韓国とインドでは事業所に託児所を設けています。また、インドでは職業訓練センターで就業能力の向上を図っています。診療所に医師、看護師が常駐しているほか、医師をコミュニティーに派遣して、そこで診察や治療を行うことも活動のひとつです。
中谷(自治体代表):黒部市にとってYKKの存在はやはり大きなものがあります。地域活性化に向けて、例えば海外での社会貢献の事例で黒部市にも応用できるものがあれば、ぜひ教えていただきたいです。
YKK:お国柄もあり、すべて応用・適用できるかは難しいですが、黒部にあったものをご提案したいと思います。
大上戸(地域住民代表):通勤時の右側通行にご協力いただき感謝しています。また、時差出勤を導入されたことで、近隣の朝の渋滞が大きく緩和されました。子どもたちの通学路も安全が確保され、大変良いことだと思っています。
先生:そうですね。地域の安全を守るため今後も真摯に考えていただきたい課題です。さらに言えば、低炭素社会へのアプローチとして、一人ひとりがガソリン車で通勤することも見直すべき時が来ているようにも思います。
稲垣(消費者代表):地域のクリーン作戦に社員の方が多数参加されたり、個人で環境に関する委員会のメンバーに入っておられたり、素晴らしいと思うのですが、それを奨励する社内の制度があればなお良いと思います。YKKさんは、事業所ごとに安全衛生や環境保全のスペシャリストがそろっておられるので、ぜひそういう能力を地域に生かしていただければと思います。
松木(ナチュラリスト):夏休みの子ども環境教室に参加した子どもたちと接するなかで気づいたのは、YKKが何をしている会社かわからない子が増えているということでした。地域の子どもたちを招いて工場見学を実施したり、ビオトープを活用した教育プログラムなども提供していただけたらと思います。
先生:地域の方々といかにコミュニケーションをとり、開かれた企業として見ていただく、関わっていただくかが大事です。協助の精神で近隣住民とともに地域を活性化していくことは企業の大きな使命だと思いますので、ぜひ今後も注力をお願いします。

■ビオトープは共生のシンボル。地域と連携した活用を

先生:自然との共生は、低炭素社会、循環型社会と並ぶ、とても重要な課題です。YKKグループではビオトープによって自然を再生する試みや、グローバルな植林に取り組んでいるということですが、この観点からのご質問やご意見をお願いします。
松岡(学生代表):ビオトープについて、川の上流からビオトープへ、また、さらにその下流域へ、トータルな生態系デザインを考えていただきたいと思っています。
中谷(自治体代表):センターパークに昔の黒部の自然を再現するのはいかがでしょう。50 年前、100 年前の姿は、子どもたちにとっても良い教材になると思います。
先生:人と自然の共存を学ぶESD (Education for Sustainable Development)というアプローチがあります。センターパークはそうした発想を展開するのに最適な場所です。子どもたちが体験し、学べる場をぜひ実現してください。
稲垣(消費者代表):私は黒部の出身なのですが、このセンターパークが誰でも自由に行き来できるということを知りませんでした。せっかくの施設なので、ぜひ市民に積極的にPRしていただいて、もっと活用できるようにされてはいかがかと思います。
大上戸(地域住民代表):私どもは用水路の掃除、泥上げを3月末に、また7月早々には草刈りをやっています。同じ流域に住むものとして、川の周辺の清掃にも共同で対応していただきたい。
先生:地域の方々と連携して、最適な方法をご検討いただければと思います。
松岡(学生代表):塩水化調査をされた際に、合わせて重金属類などの調査実施されているなら、その結果も開示していただきたいと思います。
松木(ナチュラリスト):今、扇状地の地下水源の量が減少していると聞いています。行政や大学などと協力して、地下水量を把握する調査もしていただけないでしょうか。
平野(取引先代表):工業用水のくみ上げ量が最も多かった時期から比べると3〜4 割減っているようですが、今一つ努力をしていただいて、地下水利用の一層の削減を図っていただきたいと思います。
先生:自然界との共生を考える上でビオトープは重要な役割を果たすと思います。今後は生態系を考慮した自然環境づくりを行いながら、それを地域の環境や子どもたちの教育にどう役立てていくかが課題ですね。地域との連携強化に期待しています。
平野(取引先代表):東日本大震災の影響は大変大きいですが、地域と手をとりながら、全社一丸となってがんばってください。
先生:震災の復興に力を尽くし、ぜひその活動をプレスリリースを含めて社会に積極的に発信していただきたいと思います。今日は皆さんご協力ありがとうございました。

ステークホルダーダイアログを通して

本年は第2回が開催されました。このダイアログの場は、企業の影響を直接・間接に受ける関係者と企業が真摯に対話をし、協働を通じて次なる社会を一緒に考える場です。YKKグループがこのような対話の場を持ったことを本年も評価したいと思います。さて、昨年指摘された環境負荷低減の課題、CSR経営の方向性・課題に対して、YKKグループから現状報告があり、この1年間 YKKグループで行われた活動は明確に前進があることが認められました。本年は、グローバル展開、低炭素・循環型社会でのモノづくり、地域との協助、生物多様性といった課題項目が指摘されました。これを受けて、今後ともYKKグループが持続可能な社会づくりを目指し、さらなるステークホルダーとの連携強化をすることを期待しています。

富山県立大学工学部環境工学科教授
九里 徳泰

ビオトープ観察会

古御堂エリアに二つ所在するビオトープ「ふるさとの水辺」は黒部扇状地の湧水池です。2010 年度に水性動植物を植栽・放流し、現在、植栽状況や生育状況を地元の専門家とともに定期的に視察し、アドバイスを受けています。2011年4月13日、ステークホルダーダイアログに先立ち、ダイアログ出席者の方々とともに、ビオトープの観察会が行われました。
水生動物調査ではメダカとトミヨの生息を確認しました。トミヨはきれいな冷水を好み、水質の変化や渇水の影響を受けやすい淡水魚です。また、夏場にはアユが近隣の水路から遡上していることが確認されています。


ビオトープでの水生生物の生息調査・観察(4月13日)

トミヨ(トゲウオ科)

「ふるさとの森」で育成されている植物

ふるさとの森では樹種(潜在植生)約20種類、2万本を苗木から育成し、社員だけでなく地域の方々にもご協力いただきながら植樹をしています。


創業100年の2034年ごろのYKKセンターパーク予想図

スダジイ タブノキ ハクウンボク
コナラ ヤブツバキ シラカシ