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ステークホルダーダイアログ

「自然界との共生」と「YKKグループのモノづくり」

対話を通じてステークホルダーの皆様と意見を交換するステークホルダーダイアログをYKKグループは2010年より毎年開催しています。第3回目は2012年3月21日に黒部事業所にて開催しました。対話をうながすファシリテーターとして富山県立大学 九里 徳泰先生をお迎えし、「自然界との共生」と「YKKグループのモノづくり」をテーマに、中長期の視点も交えた意見交換を行いました。「自然界との共生」以外の2011年のご意見については、活動報告を行いました。

左から 学生:松岡 志温 氏(富山県立大学短期大学部専攻科)/消費者:稲垣 里佳 氏(富山県地球温暖化防止活動推進員)/地域住民: 大上戸 久雄 氏(村椿自治振興会 副会長)/自然保護団体:山本 憲司 氏(黒部名水会 副会長)/ファシリテーター :九里 徳泰 氏(富山県 立大学工学部環境工学科 教授)/自治体:中谷 松憲 氏(黒部市 市民生活部 市民環境課 課長補佐・環境係長)/取引先:平野 明 氏(平野工務店株式会社 代表取締役)


  2011年のご意見
自然界との共生 ・ 地域の生態系の中でのビオトープ作り
(ESD:Education for Sustainable Development の活用)
・ 黒部川扇状地全体を見据えた、地下水利用調査(行政・大学との協力)
『善の巡環』と グローバル展開 ・ 倫理なくしてコンプライアンス無し
・ モノづくり=人づくり
世界共通品質 ・ 感性工学、ユニバーサルデザインの発想
・ 化石燃料に頼らない、新エネへの対応
地域社会とともに ・ 協働のベストプラクティス提案
・ 個人の能力を社会へ提供


「自然界との共生」2011年度活動報告に対する意見交換

■地域の生態系の中でのビオトープ作り(ESDの活用)

九里先生(以下先生):「自然界との共生」は企業にとって重要な課題です。YKK黒部事業所では、数多くの希少生物たちを中心とした生態系が作られはじめているということですが、皆さんからのご質問やご意見はありますか。

中谷(自治体):YKKのビオトープは開放的な場所です。外来種への対応は、どうお考えですか。


YKK:「黒部の遺伝子を残す」という活動方針でやっています。また、水中カメラを設置し、水中は定期的に観察します。


中谷(自治体):増えすぎて悪影響をおよぼす可能性がある生物種が出ないよう、個体数調査も実施してください。


松岡(学生):ビオトープは周辺の用水路や水辺ともつながりがあると思うので、可能な範囲で周辺の生物調査も行った方が良いのではないでしょうか。


YKK:ビオトープの水は吉田川に流れています。吉田川には工場の排水口があり、その影響を知るために吉田川の生物調査を10 年ほど前から毎年行っています。


先生:「個体数調査」や「周辺調査」など、調査の範囲を広げるために地域のことをよく知る地元のNPOや大学教員の手を借りることも、一つの手段ですね。


■ 黒部川扇状地全体を見据えた、地下水利用調査 (行政・大学との協力)

大上戸(地域住民):地下水では、YKKが休みの土曜日曜には水量が多く、平日は少なくなるという声が聞かれます。曜日による水量変化を調べていただきたいと思います。


YKK:自噴水量に関しては2011年12月から、高志野中学校に自動観測装置を設置し、計測しています。当社の水の使用量と地下水位の関係も今後明らかにしていきたいと考えています。わかり次第ご報告いたします。


平野(取引先):農業用水路がコンクリートで固められ、宅地もアスファルト化しています。そのため水が浸透せず、地下水そのものが不足している可能性もあります。合わせて調査すれば全体像を把握する助けになるかもしれません。


大上戸(地域住民):自噴水量の計測を村椿地区でもやっていただければと思います。


YKK:ご協力していただけるご家庭の自噴水井戸があれば、すぐにでも観測をはじめたいと思います。


先生:地域の方々のご協力をどうぞよろしくお願いいたします。


山本(自然保護団体):水資源は今後ますます不足すると予測されています。そうした時代を見据えたモノづくりを研究してはいかがでしょうか。


稲垣(消費者):ダイアログ初回より地下水の質問をしています。第2回、第3回と段階を経て調査を進めていただき大変感謝しています。やはり地下水全体の把握が重要だと思うので、YKKによる地下水利用が本当に原因なのか推測できるよう、調査個所を広げてください。


山本(自然保護団体):従業員が使う水量と工業用水として使う量を区別して計測すると、より有効なデータが得られるのではないでしょうか。


先生:黒部川扇状地の地下水の現状を把握し、その上で事業活動を行っていることを誰にでもわかるように「見える化」できれば、企業活動の好事例として世界に紹介できます。水の使用量削減についてはこれまでも相当進んでいると思いますが、更なるチャレンジをしていただきたいと思います。



■地域の生態系の中でのビオトープ作り(ESDの活用)

2011年度、YKK黒部事業所のビオトープ「ふるさとの水辺」において、3月から10月の期間、計4回に分けて鳥類、昆虫類、魚類、水底に棲む底性生物を対象に生き物調査を行いました。
次回は5年後の2016 年に実施します。2012年度は富山県内の小学4〜6 年生の親子を対象に、夏休みにビオトープ観察を実施する予定です。
 
ビオトープでの生き物調査

YKK黒部事業所で見られる代表的な希少生物


ミサゴ

ハヤブサ

カワセミ

トミヨ

メダカ

ミヤマアカネ


■黒部川扇状地全体を見据えた、地下水利用調査(行政・大学との協力)

黒部川扇状地を流れる地下水の永続的な利用を前提に、更なる活用を目指して富山県立大学工学部環境工学科講師 手計 太一氏に、地下水のあらゆる特性について現状把握と将来予想の調査・研究委託を依頼しています。調査結果は黒部市の水資源政策の一環として、すべて開示します。2011年度は水質、地下水位、地下水位の変化について調査を行い2012年度以降も継続していきます。

ヘキサダイアグラム
水質の違いをわかりやすくするために表現した図

 

水質調査
大島の地下水(赤丸)は他の地域(点線)と水質が大きく異なり、ヘキサダイアグラムのCl-が突出しており塩水化が進んでいる



■2011年のご意見に対する活動報告と黒部事業所内の主な地震・津波対策

2011年のダイアログでの「自然界との共生」以外のご意見に対し、下記のように活動報告を行い、さらに地震・津波への要望に対して現状の対応をお知らせしました。


●『善の巡環』とグローバル展開

倫理なくしてコンプライアンス無し:経営倫理の浸透を目指し、世界各国で経営層と現地従業員との座談会を実施しました。

モノづくり=人づくり:技能道場や技術研修室で技能の伝承を実施しました。


●世界共通品質

感性工学、ユニバーサルデザインの発想:従来の約半分の力で開けられる「開力軽減プッシュプル錠プレートタイプ」玄関ドアをはじめ、子どもでも簡単に操作ができる「スマートコントロールキー」などを発売しました。

化石燃料に頼らない、新エネへの対応:工場の冷却水を使った小水力発電を試験的に設置。外気と地下水の温度差を利用した、ヒートポンプ方式の冷暖房を計画中です。


●地域社会とともに

協働のベストプラクティス提案:「クリーン大作戦」などの清掃活動、「黒部名水ロードレース」の運営ボランティア、福祉施設でのボランティア活動を展開しました。

個人の能力を社会へ提供:保育所での環境教育や「くろべ水の少年団」の水生生物調査協力や各種協会などへ社員が出向しています。


●地震・津波対策

震災時の地域支援:古御堂工場グラウンドをヘリコプター発着所や救援物資の一時保管所として提供することを、富山県の津波シミュレーションに基づき、黒部市と共同で検討しています。

津波対策:離岸堤・堰堤の設置を黒部市とともに、国土交通省に陳情中です。黒部越湖製造所では、敷地内に寄り回り波対策で高さ1メートルの防水堤を設置中です。


◆YKKグループのモノづくりをファスナー手作りで体験

2011年のステークホルダーダイアログでは、出席者の方々に「YKKツアーズ」の「ファスナー手作り体験」に参加いただきました。「1日100 本作っていた昔のモノづくりが楽しく理解できて効果的」と感想をいただきました。

治具にテープを挟み、務歯をへこみにそって同じ方向にはめ込みます

務歯をプレス機で圧着します

出来上がった手作りファスナー



持続可能な社会の構築を目指す「YKKグループのモノづくり」に期待すること

1. 社会の変化をとらえた新商品開発

●低炭素社会・循環型社会への対応

平野(取引先):住宅業界では大手ハウスメーカーを中心に、太陽光発電などで電気を賄うスマートハウスの企画が進んでいます。断熱窓「APW」の省エネ性能に注目していますが、大型の商品をぜひ開発していただきたいと思います。防火性に優れた窓にも期待しています。


大上戸(地域住民):窓で困るのは、網戸の耐久性です。自分でも網戸を交換しますが、市販のものは数年で破れてしまうので、材質を考慮して長く使える商品が欲しいです。


●社会構造の変化への対応

山本(自然保護団体):家族形態が大きく変わりつつあることを前提に、柔軟に間取りが変更できる住宅など、国を巻き込んだ住宅政策を検討されてはいかがでしょうか。もう一つはファスナー付きのネクタイやワイシャツなど、高齢者に使いやすい商品の開発も今後ニーズがあると思います。


YKK:いただいた意見を持ち帰り、検討いたします。


先生:時代の変化にどう対応するかということが課題ですね。


●職能人の育成

平野(取引先):大工さんで組織される全国建築組合の加入者数は1970 年代の94万人に対して、2010 年には37万人にまで激減しています。職人が減っている中で、「APW」などの製品も取り付けを含めた責任施工でメンテナンスまでカバーすることが必要な時代がやってくると思っています。


2 モノづくりの成果の「見える化」

先生:「APW」の省エネ効果について、どの程度ユーザーに「見える化」して伝えているのでしょうか。


YKK:カタログに「APW」を使用した場合の効果を数値として掲載し、各地の営業担当者からお客様にシミュレーション情報の提供ができるよう体制を整えています。


稲垣(消費者):製品の有効性を、消費者にも目に見える形で展示するスペースがあるとより伝わりやすいと思います。


中谷(自治体):YKKセンターパークが土木学会のデザイン賞を受賞したことなど、アピールするイベントなどを考えてもいいのではないでしょうか。


YKK:カタログやショールームなどでの広告宣伝活動に加え、表彰などは広報し、よりアピールすることを考えていきたいと思います。


3 教育活動

松岡(学生):例えば「YKKツアーズ」の内容を「YKK出張ツアーズ」としてイベント化し、学校向けにYKKの取り組みや商品・サービスを紹介してみてはどうでしょうか。


YKK:「YKKツアーズ」は通算で5万人、2011年度で16,000名の方々にご来場いただきました。スタッフも10名程度まで増やし、今後も必要に応じて増強していく予定です。


先生:地元の工業高校や大学の工学部に向けて技術や商品を紹介するといったアプローチも、地元企業に愛着を持つ良い機会になると思います。

地元のモノづくりを強くするという意味で検討していただけるとうれしいですね。


■ 黒部でますます成長

中谷(自治体):これは夢ですが、いつかオールYKKの家を見てみたいと思います。


平野(取引先):この地域に住まう人がいて、仕事ができることに感謝しています。地域の発展に力を合わせていきたいと思っています。


先生:この自然に恵まれた黒部だから発信できる、これからの日本の豊かさがあるはずです。北陸、富山、黒部といった文化的・社会的な背景をしっかりと会社の方針の中に織り込んで、日本へ、世界へ伝えていく、そのスタートラインに立っているのではないかと考えます。また、モノづくりには「製品」と「作り方(プロセス)」という両面があります。製品にはYKKが考える豊かさを反映した環境性能、社会性能を求めたいと思います。プロセスにおいては生産・物流・リサイクルなどトータルな環境や社会への配慮が必要でしょう。持続可能な社会の構築を目指すYKKグループのモノづくりに今後も期待したいと思います。


YKK:さまざまなご意見をありがとうございました。今後の参考といたします。


  今回のご指摘・ご意見
 ①商品開発  ・ 低炭素社会・循環型社会、社会構造の変化への対応
 ②社外情報発信  ・ モノづくりの成果の「見える化」
 ③教育活動  ・ 各種出張授業

2011年にいただきましたご意見も継続していきます。


ステークホルダーダイアログを通して

本年は第3回が開催されました。このダイアログの場は、企業の影響を直接・間接に受ける関係者と企業が真摯に対話をし、協働を通じて未来の幸せで豊かな社会を一緒に考える場です。YKKグループがこのような対話の場を本年も継続して持ったことを高く評価したいと思います。本年は昨年指摘された、地域の生態系保全、地下水利用調査といった、自然界との共生に関し現状報告があり、活発な議論が行われました。YKKグループは継続して自然界との共生へ努力し続けることが確認されました。また、持続可能な社会の構築を目指す「YKKグループのモノづくり」に期待すること、というテーマでは、社会の動きに敏感に対応した環境配慮型製品、住居システムの推進に期待しているという意見が出ました。
今後は日本、海外でのYKKグループの事業所においてこのようなステークホルダーとの連携ができることを期待しています。

<ファシリテーター>
     富山県立大学工学部環境工学科 教授 九里 徳泰