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サステナビリティストーリー
特集「人手不足の解決に挑む」

建設に携わる人材の減少は少子高齢化によって深刻さを増しており、人手不足は建設業界が直面する大きな社会課題となっています。その中で、YKK APは省施工商品の開発や人材育成などの取り組みを行っています。自社の取り組みだけでなく、パートナーとの共創を加速させ、社会課題の解決に挑みます。



少子高齢化が進む建設業界

建設業界の就労人口は1997年の685万人をピークに漸減を続けてきました。2018年には500万人と、ピークと比べて約27%の減少となっています。さらに、就労者のうちのおよそ3割が55歳以上であり、高齢化も進んでいます。一方、29歳以下の就労人口は1割にとどまるなど、中長期で建設業界を担う人材の確保・育成はもちろん、限られた人数で施工を行うことのできる省施工商品の開発と普及は待ったなしの状況となっています。
こうした人手不足という問題に対し、建設業界でもさまざまな取り組みが行われています。IoTを活用した「i-Construction」の普及や、外国人労働者の雇用推進が提唱されて業界全体で対策が進められており、2024年4月には働き方改革が導入されます。
また、近年では、住宅の高性能化、高断熱化などに伴う施工技術の高度化によって、新しい技術に対応できる人材の育成も必要になっています。

建設修業者の現状(技能者等の推移):ピーク時から約27%減少建設修業者の現状(技能者等の推移):ピーク時から約27%減少
年齢階層別の建設技能労働者数:60歳以上が82.8万人(25.2%)年齢階層別の建設技能労働者数:60歳以上が82.8万人(25.2%)

出典:総務省「労働力調査」(H30年 平均)をもとに国土交通省にて推計


YKK APの取り組み

当社では、人々の暮らしを豊かにする窓やドアなどのモノづくりを通して、建設業界が抱える課題と向き合い、さまざまな取り組みを実践してきました。特に力を入れてきたのが「省施工」「省力化」「人材育成」への取り組みです。
業界が抱える技能伝承と人材育成という課題の解決のためには、自社での省施工商品・技術の開発はもちろん、プロユーザーやお取引先、社外を巻き込んで共創していく取り組みも重要です。
当社では、2013年にはサッシ・カーテンウォール施工技能者育成のため、「施工技能修練伝承塾」を始めました。また2019年には富山県黒部市に、プロユーザー向けに当社の技術を提案する「パートナーズサポートスタジオ」を、2020年にはエクステリア専門の施工技術研修所「DOSPACE 上尾」を埼玉県上尾市に開設しました。
こういったさまざまな取り組みを通して、社会課題の解決や業界の発展、ひいてはお客様満足の向上に貢献したいと考えています。


省施工商品の拡充

経済産業省が発行する「ものづくり白書」によると、技能とは「マニュアルなどによる継承が困難な暗黙知によって継承されるもの」とされています。少子高齢化の影響により建設業界でも高齢化と人手不足が進む中、施工現場で熟練技術を必要としないシンプルな商品と技術の需要は高まっています。

「かんたんマドリモ」

既存の窓枠を取り壊すことなく、新しい窓とドアをかぶせて取り付けるカバー工法を採用した窓のリフォーム商品です。従来の工法では、壁まで取り壊す工事によって、騒音や粉塵が発生するとともに工期が長く、コストアップにもつながっていました。
しかし、新しい窓をかぶせて取り付ける「かんたんマドリモ」のカバー工法によって、足場などの無駄なコストを省けるとともに1窓あたり約半日で施工が完了するメリットがあります。それにより、従来工法よりも施工技能者の拘束時間を短くすることが可能となり、人手不足の中にあってもスムーズな施工が可能となります。
また、従来のカバー工法では既存枠と新設枠の隙間にシーリング材を注入しなければならず、施工技能者の力量が影響していました。しかし、「かんたんマドリモ」では、気密シートを貼り付けるだけの「ノンシールカバー工法」を採用しているため、個人の施工技術に影響されずに施工品質を保つことができます。工期の短縮と施工技能者の作業負担を実現しながらも施工品質の確保を実現する工法になっています。

「かんたんドアリモ」

「かんたんマドリモ」と同じくカバー工法によって外壁工事を行わずにドアのリフォームを行います。ドアを交換した後の壁の修復工事も不要で、工期が約1日で済むという省施工商品となっています。

「かんたんマドリモ シャッター」 

住み手にとって開け閉めが手間になってしまうのが雨戸です。開閉が楽なシャッターへリフォームする際、通常は戸袋と壁を取り外して再び外壁をつくらなければならず、工期もコストも負担が大きいものとなっていました。しかし、カバー工法を使った本商品では壁や戸袋の取り壊しが不要なため、3時間ほどで取り付けが可能となっています。

「ソラリア」囲い

テラス・バルコニー向け商品「ソラリア」囲いでは、ねじの種類を半分に、使用する本数を4分の3に抑えています。また、シーリング箇所を集約するとともに集水部品まわりの乾式化によってシーリングの使用量を20%削減しました。従来の商品に比べ、施工時間の短縮と品質向上を実現しています。

「リレーリア ウォール」

従来の外構壁は、コンクリートを使った湿式施工が一般的で、複数の職種にまたがる作業が必要なため、施工技能者の技術による品質のばらつきが生じがちでした。本商品はアルミ構造フレーム製の乾式施工によって安定した品質を提供できるようになりました。

ビル用サッシ「非溶接工法」

モルタルを充填する湿式施工で、従来の溶接工法に替わる新しいサッシ施工の工法です。溶接の代わりに材料の硬化を利用した樹脂材を充填し、サッシ本体と躯体を固定します。溶接作業に必要な電源の確保が不要になるだけでなく、火気を使用しないため防火対策や、火花養生の工程の省略にもつながります。また天候に影響されずに施工することができるため、工期の安定にも貢献します。


サポート治具で省力化を
支援

近年、窓は単に住宅の内外を仕切るという機能だけでなく、高断熱化や防火仕様といった高機能が求められています。それに伴って窓の重量も大きくなってきており、施工者だけでなく運搬の段階においても負担が増えていました。
商品の品質を確保しながら、施工と運搬の安全性と作業効率を確保する支援として、作業者の高齢化にも対応した省力化が可能なサポート治具の開発を行っています。
ガラスの運搬や障子の組み立てにあたっては、窓の落下によるガラスの破損や作業者の安全に配慮が必要となります。重量の大きい障子の組み立ては、特に高齢の方や女性の作業者の負担になっていました。
当社では、「組立サポート機KT001TM」を開発。吸着ポンプでガラスを吸着することで、作業者がガラスを直接触ることなく移動や組み立てを進めることができます。作業台や床との接触によるキズの低減も可能で、安全性のみならず品質の向上が見込めます。最大80kgの重量も運ぶことができるので、作業者が一人でも無理なく重量物を取り扱うことができます。
また、特に作業者の負担となる大開口商品の施工に対するサポート治具の開発では、トラックの積み下ろし作業をサポートする簡易ハンドクレーン、大判ガラスを自立して支えることができるガラス運搬台車、ガラスの吊り上げや旋回を行う足場用吊り上げ治具といった重量物施工軽減治具を開発しました。これらを使用することで、6人工から3人工に工数を削減することができ、物流と施工の負担削減に貢献しています。

組立サポート機KT001TM 簡易ハンドクレーン ガラス運搬台車 足場用吊り上げ治具組立サポート機KT001TM 簡易ハンドクレーン ガラス運搬台車 足場用吊り上げ治具

次世代の成長を支える
「人材育成」

建設業界とモノづくりの肝となるのが、技能継承と人材育成です。少子高齢化の中で次の世代に技能を受け渡していくことは、最も重要な課題であると認識しており、YKKグループの第5次中期経営計画の最重要ポイントとして「人材育成」を掲げています。
施工技能者を育てる取り組みとしては、当社と全国のサッシ・カーテンウォール施工会社でつくる「YKK APグループ施工協力会」とともに施工技能修練伝承塾を2013年に開設しました(参照 モノづくりと施工)。塾では、通常10年で一人前といわれるサッシ・カーテンウォールの施工技能者を6年で育てる取り組みを行っており、熟練の施工技能者の知識と技能を若手に伝える機会を創出しています。
また、持続的成長の実現に向けた「人づくり」と人材戦略の立案、組織づくりをテーマに、当社では2018年度より「人材開発プロジェクト」をスタートさせました。人材開発プロジェクトでは、当社社員の人材育成はもちろん、当社の商品をビルダー・工務店などに販売いただくパートナーである建材流通店の人材育成にも、ともに取り組んでいます。その一つが、後継者育成が課題となっている建材流通店を対象とした研修です。「エリア建材研修(初級)」では、建材流通店の比較的経験の浅い社員を対象に、建築の基礎や組み立て・施工・調整などの知識とスキルを座学と実技で習得できる内容になっています。また、「営業力強化研修」では、建材流通店の中堅以下の営業担当者を対象に、建材流通店のお取引先であるビルダー・工務店と円滑にコミュニケーションを図る技が学べる内容になっています。
今後も人材育成を持続的成長の根幹と捉え、社内外の垣根を越えた取り組みを続けていきます。

人材開発プロジェクトによる「営業力強化研修」と「窓・建材研修(初級)」

施工技能修練伝承塾


パートナーとの共創で課題解決を加速

人手不足解消のためには、自社のみならず社外のパートナーとの共創が重要になります。現在当社では、社外のパートナーとの取り組みを加速させています。
その一つが、木造大型パネルプロジェクトへの参画です。YKK APは、木造建築の上棟から一時防水に至る工程をパネル化した「木造大型パネル」事業を手掛けるウッドステーション株式会社に樹脂窓を供給しています。工場で生産した一体型パネルを現場で組み上げることで工期短縮、省施工・省人化、施工品質の均一化を実現する取り組みで、施工にかかる日数を大幅に短縮することができるというものです。
また、2019年に開設したパートナーズサポートスタジオは、プロユーザーに向けて当社の技術と品質に基づく提案をし、プロユーザーが抱える課題を吸い上げて、解決を提案する施設です。施設内では商品の施工と使用時の品質や技術情報を施工研修会などによって提供しています。また、2019年7月にはパートナーズサポートスタジオにおいて、窓リフォーム店「MADOショップ」の施工技能者とともに共同施工検証を行うなど、施工者の声を反映した商品開発などにも取り組んでいます。
加えて、エクステリア施工技能者の育成・レベルアップや施工技能の伝承を目的に、DO SPACE 上尾を2020年1月に開設しました。本施設の役割は、エクステリア施工初心者やYKK AP商品未取り扱い者を中心とした人材育成や施工技能者のレベルアップを図ることです。多様化する商品や納まりに対して高水準な品質を担保するための研修カリキュラムを開発・実行するとともに、当社とエクステリア施工技能者が共創・共働する拠点としての役割も担います。
さらに、2019年には米国のカーネギーメロン大学と、ロボット・IT技術を使用した開口部施工技術の開発と生産性向上を目指す産学共同研究を開始(参照 モノづくりと施工)するなど、大学や研究機関との共同研究などにも力を入れています。
今後も当社では、技術の継承に加え新しい技術も取り入れながら、人手不足という社会課題の解決に取り組んでいきます。

パートナーズサポートスタジオの外観

パートナーズサポートスタジオでの施工技能者と当社開発担当者による
共同施工検証

DO SPACE 上尾の外観

DO SPACE 上尾での施工実技研修

この記事は2020年8月に執筆しました


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