2.概要

a. 建築物省エネ法体系

建築物省エネ法への移行にあたり、住宅の基準に関しては平成25年省エネ基準(以下H25年基準)を継承し大きく変わりませんが、将来の義務化を踏まえ、法体系が大きく変わりました。

省エネ基準の改正概要

b. 平成28年省エネ基準の水準について

  • エネルギー消費性能基準については、H25年基準の水準と同じです。
  • 誘導基準については、外皮基準についてはH25年基準と同じ水準、一次エネルギー消費量基準については、非住宅はエネルギー消費性能基準よりも20%削減する水準、住宅は10%削減する水準です。
  • 住宅事業建築主基準については、次期目標年次を令和2年度とし、外皮基準についてはH25年基準と同じ水準、一次エネルギー消費量基準についてはエネルギー消費量基準よりも15%削減する水準です(令和3年度までは10%削減の水準)。
  • 地域区分については、8区分に分かれます。なお、2019年(令和元年)11月国土交通省告示第783号にて、地域区分の見直しが行われました。経過措置として、2021年(令和3年)3月末までは、新旧の地域区分どちらを使用してよい事となっています。
エネルギー消費性能基準
(適合義務、届出・指示、省エネ基準適合認定表示)
誘導基準
(性能向上計画認定・容積率特例)
住宅事業建築主基準
建売戸建住宅 注文戸建住宅 賃貸アパート
建築物省エネ法施行(H28.4.1)後に新築された建築物 建築物省エネ法施行の際現に存する建築物 建築物省エネ法施行(H28.4.1)後に新築された建築物 建築物省エネ法施行の際現に存する建築物 上段:~令和元年度
下段:令和2年度~
上段:~令和元年度
下段:令和6年度~
上段:~令和元年度
下段:令和6年度~
非住宅 一次エネ※1 1.0 1.1 0.8 1.0 - - -
外皮:PAL* - 1.0 - - - -
住宅 一次エネ※1※2 1.0 1.1 0.9 1.0 0.9 - -
0.85 0.75(0.8)※4 0.9
外皮:住戸単位
(UA ,ηA)※3
1.0 - 1.0 - - - -
1.0 1.0 1.0

※1 一次エネ基準については、「設計一次エネルギー消費量(家電・OA機器等を除く)」/「基準一次エネルギー消費量(家電・OA機器等を除く)」が表中の値以下になることを求める。
※2 住宅の一次エネ基準については、住棟全体(全住戸+共用部の合計)が表中の値以下になることを求める。
※3 外皮基準については、H25年基準と同等の水準。
※4 当面の一次エネ基準としては、各年度に供給するすべての住宅の平均で省エネ基準に比べて20%の削減とする。

■住宅の基準(外皮性能)

外皮の熱性能については、平成25年省エネ基準相当の水準が引き続き求められます。

  • 外皮平均熱貫流率(UA値):住宅の内部から外部へ逃げる熱量を外皮全体で平均した値です。
  • 冷房期の平均日射熱取得率(ηAC値):入射する日射量に対する室内に侵入する日射熱の割合を外皮全体で平均した値です。
外皮平均熱貫流率と冷房期の平均日射熱取得率

■外皮性能基準

地域の区分 1 2 3 4 5 6 7 8
①住戸単位で基準への適否を判断する場合
(戸建住宅・共同住宅等)
外皮平均熱貫流率[W/(m2K)](UA値) 0.46 0.46 0.56 0.75 0.87 0.87 0.87 -
冷房期の平均日射熱取得率(ηAC値) - - - - 3.0 2.8 2.7 6.7
②住棟単位で基準への適否を判断する場合
(共同住宅等)
住棟単位外皮平均熱貫流率[W/(m2K)](UA値) 0.41 0.41 0.44 0.69 0.75 0.75 0.75 -
住棟単位冷房期平均日射熱取得率(ηAC値) - - - - 1.5 1.4 1.3 2.8

※ 外皮性能基準は、戸建住宅と集合住宅で同水準です。
※ 平均日射熱取得率は冷房期についてのみ外皮性能に関する基準として定められていますが、日射熱取得利用による暖房エネルギー削減のための重要な指標であるため、一次エネルギー消費量算定の際は、暖房期についても求めることが必要となります。

c. 地域区分

  • 全6地域 (Ⅰ~Ⅵ地域)⇒全8地域(1~8地域)(例 東京はⅣ地域→6地域)
  • 住宅事業建築主の判断基準(トップランナー基準)で用いられている地域区分を踏襲
  • 各地域区分の詳細については、「平成28年度経済産業省・国土交通省告示第265号」の「別表10」をご確認ください。
    なお、2019年(令和元年)11月国土交通省告示第783号にて、地域区分の見直しが行われました。経過措置として、2021年(令和3年) 3月末までは、新旧の地域区分どちらを使用してよい事となっています。

【地域区分の改正】

地域区分の改正

d. 誘導措置と規制措置について

建築物省エネ法は大きく誘導措置と規制措置の2つに分けることができます。
誘導措置等は平成28年4月1日に施行、規制措置は平成29年4月1日に施行されました。

誘導措置(任意)

【誘導措置】の主な内容

  • ① 性能向上計画認定・容積率特例 -
    誘導基準に適合(性能向上計画認定)すると、容積率の特例(10%の緩和等)を受けることができます。
  • ② 省エネに関する表示制度 -
    省エネ基準に適合すると、その表示をすることができます。
    <自己評価ラベル>:新築と既築が対象
    <BELS>:新築と既築が対象(第三者機関が認定)
    <eマーク>:既築が対象(所管行政庁が認定)
規制措置(義務)

【規制措置】の主な内容

  • ① 適合義務 -
    非住宅の特定建築物は、エネルギー消費性能基準への適合義務と、基準適合について判定を受ける義務があります。
  • ② 届出義務 -
    300m2以上の住宅の新築、増改築に係わる計画は届出義務があります。
  • ③ 説明義務(2021年4月から) -
    300m2未満の小規模建築物(住宅・非住宅)では省 エネ性能適合可否について建築士から建築主へ の説明の義務が課せられる予定です。
  • ④ 報告義務(トップランナー対象) -
    建売戸建住宅150棟/年以上の住宅事業建築主は、国交省からの報告を求められた場合、基準の達成状況を報告する義務があります。(2019年11月、対象に・300戸/年以上の注文戸建住宅・1000戸/年以上の賃貸アパートの供給事業者が追加)

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