第2話 熱中症と窓 イラスト

いまでは「熱中症」を知らない人はいないと思いますが、昔は「日射病」と言っていました。帽子もかぶらず炎天下で遊んでいると、「日射病になるよ」と注意されていたものです。つまり、太陽光に長時間さらされて倒れてしまう症状を言っていたのです。
「熱中症」という言葉が最初に使われ始めたころは、大学の講義などで熱中症の話をしようとすると、何かに熱中する病気かと誤解されたりしたものです。

熱中症の症状と徴候

「熱中症」とは、暑い環境で発生する障害の総称で、「熱失神」「熱疲労」「熱けいれん」「熱射病」の4種類に分けられます。

「熱失神」とは、暑さが原因で起こるめまいや失神のこと。顔面蒼白となり、脈が速くて弱くなる症状が出ます。人間の身体が体温を下げようとするとき、身体の表面から放熱しようとするため、皮膚の血管が拡張して皮膚への血量が増えます。そのせいで血圧が下がって、脳への血流が低下してしまうのです。
「熱疲労」とは、大量の汗をかいて脱水状態になること。脱力感、倦怠感、めまい、頭痛、吐き気などの症状が見られます。 「熱けいれん」とは、大量の汗をかいて水だけを補給したとき、足、腕、腹部の筋肉に痛みを伴うけいれんがおこること。汗と一緒に排出された塩分が補われず、体内の塩分濃度が薄まってしまうのが原因です。
「熱射病」とは、非常に危険な状態のことで、体温の上昇により中枢機能に異常をきたします。意識障害(反応が鈍い、言動がおかしい、意識がない)がおこり、死亡率が高くなります。ニュースで出てくる熱中症による死亡報告は、この状態になっていることです。

参考資料:日本体育協会スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック

家の中でも熱中症はおきる?

熱中症は夏が多いのは確かですが、夏だけではありません。春や秋にも発生していますので、急に気温が上がったときには要注意。同じ気温でも、湿度が高いと熱中症の危険性が高くなります。また、運動強度が強いほど熱(体温上昇)の発生も多くなるので、熱中症の危険も高まります。以下に基準を示しましたので、判断材料にしてみてください。

家の中でも屋外でも熱中症のキケンが!
家の中でも屋外でも熱中症のキケンが!
家の中でも屋外でも熱中症のキケンが!
※WBGT(湿球黒球温度)の算出方法
  屋外:WBGT=0.7×湿球温度+0.2×黒球温度+0.1×乾球温度
  屋内:WBGT=0.7×湿球温度+0.3×黒球温度
※環境条件の評価はWBGTが望ましい。
※湿球温度は気温が高いと過小評価される場合もあり、湿球温度を用いる場合に
 は乾球温度も参考にする。
※乾球温度を用いる場合には、湿度に注意。湿度が高ければ、1ランクきびしい
  環境条件への注意が必要。
(日本体育協会:『スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック』より引用)

この温度は室内でも同じです。日射があるかないかより、温熱負荷量が重要です。一般家庭ですとWBGT(湿球黒球温度)のメーターなどはありませんので、乾球温を参考にするとよいでしょう。乾球温は、いわゆる普通の温度計で計測した温度のことです。室内温度が28℃を超えたら「警戒」。熱中症の危険があることを意識しましょう。

室内で注意しなければならないのが高齢者。高齢者は温度に対する感覚が弱くなっているので、のどの渇きをなかなか感じなくなります。のどが渇かなくても水分補給に気をつけなければなりません。大きな温度計を設置し、温度をこまめにチェックして、水分補給を心がけることが大切です。

熱中症予防と対策

家の中では、エアコンをうまく使って熱中症予防をしましょう。いま省エネが叫ばれていますが、無理は禁物です。熱中症の警戒温度である28℃を超えないように室温を設定しましょう。また設定温度が低すぎると(24℃以下)、外気温と室温の差が大きくて身体に負担となるので、適切な温度設定を行ってください。

熱中症が発生したら、まずは涼しい場所に移動し、水分補給を行う、そして身体を水や冷風で冷やして放熱する、ということが基本でしょう。体温を下げるためには、大きな動脈のところを冷却すると効果的なので、首の頸動脈・脇の下・両足の太ももの付け根(内側)をアイスパックや濡らしたタオル等で冷やすとよいでしょう。予防ということであれば、首を冷やすのが一番。今はいろいろなグッズが発売されているので、それらを活用すれば、予防効果が期待できます。

水分補給であれば、塩分も補えるイオン飲料が効果的です。作り方は非常に簡単、そして安価です。冷たい水(5℃~15℃)に食塩0.1~0.2%、砂糖5%。それに薬局等で売られているクエン酸を足すこともよいでしょう。
また、日頃から汗をかくことも必要です。少し早足のウォーキングで十分。2週間も続けると、徐々に身体が暑さに適応して、熱中症になりにくい体質が作られてきます。日頃から発汗する習慣をつけて、暑さ対策を考えておきましょう。

熱中症になりにくい室内環境を考えるなら、いかに室温をあげないようにするかがポイントになります。窓にすだれやグリーンカーテン等を設置して、日差しを遮る工夫をすると良いでしょう。

まとめ:熱中症の対策にも窓が一役買います

重症化すると命に関わることもある熱中症。節電を意識するのも大切ですが、室温が28℃を越えたときにはエアコンを利用して、熱中症の危険を減らしたいものですね。窓にすだれやグリーンカーテン等を設置するとともに、断熱性の高い二重窓や遮光・遮熱フィルムを利用すれば、室内の気温上昇を抑えられるので、エアコンの消費電力も少なめにすることが可能です。このように、健康的な住まいづくりには、窓が一役買っているのです。

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※YKK APより井川先生に依頼をし、頂いたコメントを編集して掲載しています。

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