第5話 暖房・結露と窓 イラスト

結露は、空気中の水蒸気が冷やされて水に姿を変えたものです。結露を放っておくと、家の中に湿気がたまり、カビが発生しやすくなります。家のカビは、ぜんそくやアレルギーの原因となる危険性があるので、注意が必要です。
カビは季節に関わらず発生します。冷蔵庫の中でも発生します。温度20℃~30℃、特に25℃前後で発生しやすく、湿気が多いほどカビの成長に適した環境です。湿度(相対湿度)80%以上で繁殖しやすく、湿度92%を超えると著しい増殖が見られます。
結露の発生しやすい冬場の住環境では、温度管理より湿度管理が重要と言えましょう。

冬の室内、心地いい温度はどれくらい?

快適な温度は季節によって異なります。夏の快適な室温は26℃前後。22℃以下だと肌寒く感じます。冬の快適な室温は22℃前後で、26℃では暖かすぎます。だだし、この値は暖房の方法によって違ってきます。たとえば、エアコンなどの温風暖房では気流が人の体温を奪うので、室温が25℃以上でないと暖かさを感じません。床暖房などの輻射暖房(壁や床のような広い面から放熱する暖房)では、室温が20℃前後でも暖かく感じます。

冬季の廊下や浴室・トイレなどの温度は、ヒートショック(詳しくは第4話のコラムを参照してください)を起こさない安全レベルとして17℃、寝室では16℃と言われています。16℃以下になると眠りの途中で目が覚めてしまうことが増え、レム睡眠が減少し、睡眠の質が悪くなってしまうからです。

このようなことから、冬の室内温度は18℃~23℃が一般的に快適な温度と言われています。体感温度は、室内の空気の温度だけではなく、床、壁や窓、天井から伝わってくる温度も重要です。暖かい空気は上にたまりやすいので、上から下への空気の流れを作るようにするとよいでしょう。

石油ストーブを正しく使っていますか?

今年は3月11日に発生した東日本大震災の影響で、省エネ対策として石油ストーブが飛ぶように売れているそうです。入荷待ちのお客さんも沢山いるとのことですが、石油ストーブの暖房は注意が必要です。

石油ストーブは、室内置きで室内の空気を燃焼して暖めるタイプがほとんどだと思いますが、灯油を利用した暖房には、室内の空気質の問題が生じることも意識しなくてはなりません。国民生活センターの調査によると、閉め切った室内で灯油暖房機を使用した場合、10分前後で健康保護の目安となる二酸化炭素濃度を超えたため、健康への影響が懸念されたと報告されています。また、20℃の設定と25℃の設定では、25℃の設定の方が室内の二酸化炭素濃度は高くなり、室内環境が悪化すると報告されています。

このことからわかるように、灯油を利用した暖房を使うときには室温を低めに設定する方がよいと言えます。できれば20℃くらいの設定にして、サーキュレーターなどを活用して強制的に対流を作って空気を循環させ、快適な環境づくりを心がけましょう。

国民生活センターでは、灯油暖房機を使う消費者へアドバイスとして、室内汚染物質を下げるためには、窓を開ける場所が1カ所では不十分であるとしています。換気扇を併用したり、2カ所以上の開口部を設けたりする工夫が必要です。
1時間に1分間、2カ所以上の窓を全開して換気をすると、室内の空気質が改善されます。その際、わずかに室温が下がりますが、すぐに回復するとの報告もあります。冬場も窓と上手に付き合いながら、室内空気質環境に注意して、快適に冬を越しましょう。

参考資料:「石油ファンヒーターによる室内空気汚染」
(2007年10月5日公表、独立行政法人国民生活センター)

灯油暖房機使用時は、温度を低めに設定し、 1時間に1分間、2カ所以上の窓を全開して換気をするのが理想的。
灯油暖房機使用時は、温度を低めに設定し、
1時間に1分間、
2カ所以上の窓を全開して換気をするのが理想的。

暖房と結露とカビの関係

結露とは、空気中の水蒸気が冷やされて凝縮し、水になること。温度20℃、湿度50%の室内における露点温度(水蒸気を含む空気を冷却したとき、凝結が始まる温度)は、9.6℃。つまり、壁や窓などの表面が、9.6℃以下の場所で結露が発生するということです。今年人気の石油ストーブの暖房は、水蒸気を大量に発生させるので、結露を助長してしまうことがあります。

ストーブで空気が暖められると、空気中に含むことができる水分の量が多くなります。しかし、ストーブを消して室温が下がると、飽和水蒸気量も下がるので、それまで空気中にあった水蒸気が空気に含みきれなくなり、水滴といった現象となって現れます。こうしたことの繰り返しが、カビの発生に繋がるのです。

カビは鼻や口から体内に侵入して被害を及ぼします。例えばアレルギー性鼻炎やぜんそくなどがそうで、最近の研究では肺炎などを引き起こす原因のひとつとも考えられています。エアコンをはじめとした空調機器のフィルター汚れにより、空気中にたくさんのカビ胞子が飛散し、その空気を吸入することで、過敏性肺炎を起こすこともあります。

カビ菌とダニが好む環境は見事に一致していて、"高温多湿"です。カビが発生している状況下では、ダニも発生していると考えてよいでしょう。ダニはカビ菌が大好きで、カビがはびこっている場所には必ずダニが生息していると考えていいほどです。カビの発生を防ぐことが、ダニの発生を防ぐことにもなります。健康に害を及ぼす「カビ・ダニ対策」は、室内の湿気対策が非常に重要なのです。定期的に窓を開けて換気をし、室内の湿気を追い出すようにしましょう。

結露の繰り返しが、カビ・ダニの発生の原因に。湿度対策が重要。
結露の繰り返しが、カビ・ダニの発生の原因に。
湿度対策が重要。

使っている加湿器を確認してみましょう

冬場の湿度管理によく使われるのが加湿器。家庭でよく使われる加湿器には、スチーム式、気化式などがありますが、超音波式の加湿器を利用している場合は注意が必要です。

超音波式加湿器は、水道水に含まれている塩素を速やかに分解してしまうので、殺菌効果がなく、内部は微生物の繁殖に適した環境になってしまいます。古い水を入れ替えずに使用したり、掃除を怠ったりすると、カビやレジオネラ菌などの雑菌が大量に増殖。そのまま部屋中に放出されてしまうのです。雑菌を含んだ水蒸気は1~2ミクロンの細かい粒子となって室内に長く留まり、重大な健康被害を及ぼすケースがあります。雑菌が肺に沈着しておこる加湿器病(過敏性肺臓炎)と言われるものです。もし家庭で超音波式の加湿器を利用しているなら、こまめに掃除して内部を清潔に保ちましょう。

冬場の室内で快適な気温・湿度を作り出すためには、使っている暖房機器や加湿器の特性をよく知ることも大切です。空気質や結露に注意して、この冬を健康に乗り越えましょう。

まとめ:暖房による結露防止対策にも、窓が一役買います。

乾燥しがちに思える冬ですが、家の中では湿気が意外に多く隠れています。カビの発生にも繋がる結露には十分気をつけたいものですね。結露を減らすためには、家の中から寒い部屋や寒い箇所をなくすことが重要です。特に窓からは多くの熱が奪われるので、断熱性の高い窓に替えると、結露の発生を抑えることもできます。もちろん定期的な換気も欠かせませんが、断熱性の高い窓は室内の保温性も高いので、外気からの影響を最小限に抑えることも可能です。このように、暖房による結露防止対策にも、窓が一役買っているのです。

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※YKK APより井川先生に依頼をし、頂いたコメントを編集して掲載しています。

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