第6話 におい・ハウスダストと窓 イラスト

感覚のなかで嗅覚はまだ解明が遅れています。一般に“におい”の感覚はとらえにくく、例えば視覚や聴覚と比べると研究面においても欠けていると思います。視覚は画像で、聴覚は音ということで、明確に情報を認識することができますが、においのイメージはなぜか明確ではありません。
ハウスダスト(英語:house dust)はまさしく室内のゴミのこと。空気中を漂うチリやホコリのようなものですが、アレルゲンとなる物質を含んでいるため、体内に入るとアレルギー症状を引き起こすことがあります。今回はにおいやハウスダストが、住居においてどのように健康にかかわっているかを考えてみましょう。

家の「におい」の原因はなに?

「五感」と呼ばれる我々の感覚のなかで、嗅覚にはどのような特徴があるかを考えてみましょう。化学物質を知覚・認識するという点では味覚と同じです。味覚は直接舌で感じます。それに比べてにおいは遠隔的な感覚ですが、果たしている役割は非常に重要です。食事のシーンを思い出してみましょう。鼻をつまんで食事をすると、味の感覚が非常に薄れます。味の感覚であると思っていたものが、実際はにおいの認識であったことに気づくでしょう。食事の際は五感すべてを使っていますが、嗅覚が占める割合が意外に大きいことがわかります。

また、家の中のにおいを気にしている人は多いと思われます。テレビCMなどでも消臭対策の製品がいろいろ宣伝されていますね。部屋のにおいの原因は一体何でしょうか。一番大きな原因は体臭と言われています。その次に食べ物のにおい、トイレのにおい、台所のにおいなどがあります。
「わが家はにおいなんてしない」という方もいるかもしれません。でも、その家独特のにおいは存在しています。人の鼻は特定のにおいを絶えず嗅いでいると嗅覚が麻痺して、そのにおいを感じなくなってしまうのです。かなり強烈なにおいでも短時間で麻痺してしまうそうです。飼いはじめには気になっていたペットのにおいも、慢性的にさらされていると感じられなくなってしまいます。自分の家のにおいは、鼻がそのにおいになれてしまい、家族は感じなくなっているだけなのです。

台所のにおいの原因は、生ゴミと排水溝。そこに発生するブドウ球菌や大腸菌などのバクテリアがにおいの元です。このバクテリアは食中毒の原因となるので、夏場は特に注意が必要でしょう。台所以外の場所でも、室内に発生したカビや室内干しの洗濯物のにおいもあります。
臭気は下に流れるので、トイレなどにおいが気になる場所の窓は、下の方についている方が効果的に換気ができるのではないかと思います。台所もにおいが気になる場所ですが、排水溝やゴミに加え、料理の煙や湯気のことを考える必要がありそうですね。このように、家を建てる際には、お部屋の配置だけではなく、窓の配置にまでこだわっていただくと、においがこもらない家作りができるのではないでしょうか。

家のニオイも窓で変わるかも?
家のニオイも窓で変わるかも?

アレルギーの原因はハウスダスト?

ハウスダストは、目でははっきりと見ることができない小さなゴミです。しかし、その中にはペットや人間のフケ、ダニの死骸やフン、カビ、花粉、それに砂塵や繊維のクズなどが混ざり合っていて、アレルギーの原因であるアレルゲンを含んでいます。喘息やアレルギー性鼻炎などの原因のひとつが、ハウスダストです。また、ハウスダストはシックハウス症候群にも間接的な関わりがあることがわかっています。

建築の分野でシックハウス症候群が問題となったのは、1990年代後半からです。その原因の代表として騒がれたのが、建材に含まれている化学物質ホルムアルデヒド。いまでは対策が進んで、室内空気のホルムアルデヒドは劇的に減りました。しかし、ホルムアルデヒドには防腐作用や殺菌作用があったので、建材に含まれるホルムアルデヒドが少なくなったことで、カビが発生しやすくなったとも言えます。

そこでまた新たな問題が生じました。ちょっと難しい話ですが、カビや微生物が生命活動をする中で放出する化合物のことをMVOC(Microbio Volatile Organic Compounds)といいます。このMVOCがシックハウスの新たな問題として考えられているのです。

「カビ臭い」と感じるにおいは、ジェオスミンというMVOCが原因です。ジェオスミンは、カビが増殖・代謝する過程で排出する化合物だとされています。空気中のジェオスミン濃度が上がると強いにおいを感じ、皮膚や目、のどが刺激されます。この皮膚や目、のどへの刺激は、シックハウス症候群の典型的な症状。ホルムアルデヒドなど有害な化学物質が指標値を下回っていても、シックハウス症候群の症状が見られるケースでは、建物内でMVOCが多く検出されることがあるのです。

カビは生きていくために、ハウスダストなどの有機物を分解して栄養を摂取しています。カビのエサとなるハウスダストを出さないようにすることが、シックハウス症候群対策の第一歩といえるでしょう。同じくハウスダストをエサとして繁殖するダニを増やさないためにも、ハウスダストを除去することは非常に重要です。

家中しっかりお掃除することも必要ですが、室内にハウスダストを含んだ空気を留めないことも大切。ひとつの窓だけを開けるのではなく、2ヶ所以上の窓をあけて空気の流れをつくると、きれいな空気に入れ替えられます。こまめな換気とお掃除で、健康的な住まいを確保しましょう。

ハウスダストを出さないことがシックハウス対策の第一歩。
ハウスダストを出さないことがシックハウス対策の第一歩。

まとめ:におい・ハウスダスト対策にも窓が一役買います。

高断熱・高気密な現代の住宅は、快適であると同時に汚れた空気やにおいがこもりやすくなる場合があります。こうした現象を減らすために、窓による換気は重要な役割を果たしています。お掃除の際に、定期的に窓を開けて空気を入れ替えると、ハウスダストも一掃され、ダニやカビが成育しにくくなります。また、押入れやクローゼットの扉も開けて空気を対流させると、カビのにおいなども軽減されるはず。窓は新鮮な空気の入口です。このように窓は心地よい住環境づくりに一役買っているのです。

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※YKK APより井川先生に依頼をし、頂いたコメントを編集して掲載しています。

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