技術資料気密性
- ※参考文献 :
- (一社)日本サッシ協会「わかりやすいサッシ・ドアの性能 BASIS 2021」
気密性とは
気密性とは、サッシ・ドアセットの枠と戸のすき間から、どれくらいの空気 (すき間風)がもれるかを、表す性能です。
冷暖房時の熱損失を少なくする、騒音の侵入を防ぐ、また、砂やほこりの侵入を抑えるために、気密性の高いサッシ・ドアセットが求められています。
気密性は面積1m²当たり1時間当たりどれくらいの空気がもれるかを基準とした等級で表し、空気のもれはm³/(h・m²)で表されます。

気密性の試験方法および性能
気密性の試験方法
JIS A 1516に、建具の気密試験方法が規定されています。試験方法は下図のように圧力箱と、気密箱の間にサッシ・ドアセットを取り付け、10Pa、30Pa、50Paおよび100Paの圧力差を加え気密箱の方にもれた空気の量を測定し、数値を気密等級グラフにプロットし、あらかじめ決められた気密等級線を超えていないか確認します。



気密性の等級と性能
JIS A 4702:2021(ドアセット)・JIS A 4706:2021(サッシ)に気密性による等級と性能(判定基準)が下表のように規定されています。
性能項目 | 等級 | 気密性等級線 | 判定基準 |
---|---|---|---|
気密性 |
A-1 A-2 A-3 A-4 |
A-1等級線 A-2等級線 A-3等級線 A-4等級線 |
該当する等級について、通気量が 図1に規定する気密等級線以下でなければならない |
選定の目安
サッシ・ドアセットの気密性は、求める居住環境により選定します。
A-1 | A-2 | A-3 | A-4 | |
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該当品の目安 |
室内用建具
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普通サッシ・ドアセット
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断熱サッシ・
ドアセット |
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防音サッシ・
ドアセット |
注意事項
- 公共建築物等に用いるサッシ・ドアセットの選定の際は、管轄する各官公庁の仕様として、性能を定めている場合がありますので、確認することが必要です。
- 建築物の高気密化により、酸欠や結露の被害が発生することがあります。適切な計画換気ができるシステムと併用してください。
- 火山灰地域や粉雪が降雪する寒冷地域等の特殊な環境条件下においては、気密性の高いサッシ・ドアセットや、二重サッシを使用するなどによって、実生活上の不都合を防ぐ配慮が必要です。
気密性が良いと、
- 冷暖房における熱負荷が少ない → 省エネルギーにつながります。
- 屋内・屋外の騒音に対する遮音性能が良くなる → 静けさにつながります。
- 外部からの塵埃、粉雪の吹込みが少ない → 快適な環境につながります。
省エネルギー基準で求められるサッシ・ドアセットの気密性
エネルギーの使用の合理化に関する法律(略称:省エネ法)に基づく住宅の設計及び施工の指針において、気密性能が求められていた経緯があります。以下に、省エネルギー基準における開口部の気密性の規定の変遷を示します。
指針名 | 告示 | 省エネ基準通称名 | 気密性に関する規定 | |||||||||||||
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住宅に係るエネルギーの使用の合理化に関する設計及び施工の指針 | 昭和55年建設省 告示第195号 |
旧省 エネ基準 |
なし | |||||||||||||
平成4年建設省 告示第451号 |
新省 エネ基準 |
I地域において、次のいずれかに該当する場合、気密性A-4等級を満たすこと
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平成11年建設省 告示第998号 |
次世代 省エネ基準 |
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住宅に係るエ ネルギーの使 用の合理化に 関する設計、 施工及び維持 保全の指針 | 平成18年国土交通省 告示第378号 |
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平成21年国土交通省 告示第118号 (告示第378号の一部改正) |
なし | |||||||||||||||
平成25年国土交通省 告示第907号 |
平成25年 省エネ基準 |
なし |
計画換気における気密の重要性
シックハウス症候群やアレルギーへの対策として、建築基準法により住宅全体 を考えた計画的な換気を取り入れることが求められています。(技術基準は、建築基準法施行令第20条の7など)
換気の計画をたてるためには、新鮮な空気を取り入れる給気から汚れた空気を排出する排気までを考えることが重要です。排気口と給気口以外に気密性の悪い建具などによる隙間があると、漏気により換気経路が乱れて効率良く換気を行うことができません。

隙間が少ないと、換気経路の乱れが少ないため、効率の良い換気ができます。

隙間が多いと、換気経路が乱れて効率的な換気ができません。