技術資料結露防止性

※参考文献 :
(一社)日本サッシ協会「わかりやすいサッシ・ドアの性能 BASIS 2021」

結露防止性とは

結露とは

空気中には、水蒸気の状態で水分が含まれており、これを湿気 といいます。
空気中に含むことができる水蒸気の量(飽和水蒸気量)は温度によって変わり、暖かい空気は水蒸気を多く含むことができますが、冷えた空気は少ししか含めません。
湿気を含んだ空気が、冷たい物に触れると過飽和状態になり、水分となって冷たい物の表面に現れる現象を結露といいます。
結露には、窓ガラスや壁の表面の低温部に発生する「表面結露」と、壁内部で結露する「壁体内結露」があり、結露が発生すると、カビの発生により室内仕上げを汚染して美観をそこねたり、人体や構造体に悪い影響を与えたりします。

水が入ったグラスが結露しているイラスト

結露防止性とは

結露の発生をどの程度防げるかをいいますが、室内空気温度を上げるか、室内の表面温度を上げるか、湿度を下げるかによって結露の発生を防ぐことができます。

窓ガラスが結露しているイラスト

建具の結露防止性能の試験方法

JIS A 1514(建具の結露防止性能の試験方法)に試験方法が 規定されています。

建具の結露防止性能の試験方法 解説図

結露が発生する温度と湿度の関係

結露が発生し始める温度を露点といい、下図の湿り空気線図で求めることができます。
例えば、温度(乾球温度)20°C、相対湿度60%の空気は、湿り空気線上の交点Aで示されます。この空気を冷却すると飽和状態(相対湿度100%)のB点に達し、露点温度は約12°Cとなります。これ以下の温度になると結露が発生し始めます。

湿り空気線図

湿り空気線図
絶対湿度 :
湿り空気中の乾燥空気1kg当たりに含まれる水蒸気の重量
[絶対湿度の単位(kg/kg’)は、一般に重量絶対湿度をあらわす。]
相対湿度 :
ある空気中の水蒸気量と、その温度の飽和水蒸気量の比率
乾球温度 :
不飽和水蒸気を含んだ空気の温度

温度低下率とその計算例

サッシ面または壁体面に表面結露を生じさせないためには、壁体面の温度低下率を低くし、飽和温度以下にならないようにします。温度低下率は1式で表されます。この数値が低いほど結露防止性能の高いサッシといえます。

1

温度低下率 計算式
R
: 熱貫流抵抗
ΘHA
: 室内空気温度
ΘHS
: 室内側表面温度
ΘCA
: 室外側空気温度
ΘCS
: 室外側表面温度
γ i
: 室内側熱伝達抵抗

計算例

温度低下率 計算例

室温20°C湿度60%外気温0°Cのとき、壁体内側面に表面結露を生じさせないR値(熱貫流抵抗値)を求めるとします。この時の露点温度を湿り空気線図より12°Cを求めます。室内側熱伝達抵抗(γi)は室内自然対流の時約0.13とします。故にR値は0.33以上必要となります。

温度低下率 グラフ

結露防止対策

結露の発生する要因として、室内外の温度差と室内の温・湿度があげられます。これらをうまくコントロールすることが、結露の発生を防止する方法となります。

  1. サッシおよびガラスの室内側表面温度を高く保つ

    • 断熱性の良いサッシおよびガラスを用いる。

      サッシ……
      アルミ複層ガラス入りサッシ、アルミ熱遮断構造サッシ、アルミ樹脂複合サッシ、樹脂製サッシ、木製サッシなど
      ガラス……
      複層ガラス、高断熱低放射複層ガラスなど
    • カーテンなどを開け、サッシ表面の温度を上げる。
    • サッシに温風を当て、表面温度を上げる。
    • サッシの外側に風除け、雨戸などを設ける。
  2. 室内の相対湿度を下げる

    • 換気扇を設置する。
    • 除湿器などにより除湿する。
    • 吸・排気型(FF式)暖房機を用いる。
    • 水蒸気を発生する解放型暖房機の使用を控える。

注意事項

  1. 必要以上の加湿は避けてください。
    室内では洗濯物をできるだけ干さないことや、開放型ストーブを使用しないなど、加湿要因を減らすことが大切です。
  2. できるだけ換気をしてください。
    窓を開ける。小窓、換気口、換気扇を使って換気をするなど。
  3. カーテン、ブラインド、和障子などは断熱性を向上させる反面、室内の空気の温かさをさえぎり、建具の室内側表面の温度を下げ、結露を促進するので注意をする必要があります。
  4. 単板のガラス厚を厚くしても、断熱性は向上しないので結露の発生量はほとんど変わりません。
  5. 室内側に入隅があると、自然対流による熱移動が小さくなり、空気の動きが悪くなり表面温度が低くなるため結露を促進する場合があります。

    開口部周辺の自然対流の影響

    枠周辺部はガラス中央部に比べて一般的に条件が厳しく、
    中でも下枠周辺は最も不利な条件下にあります。

    開口部周辺の自然対流の影響 解説図1

    枠線部は自然対流による空気の動きが
    よどみやすい部分。

    開口部周辺の自然対流の影響 解説図2
  6. 結露水はすみやかに除去してください。
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