技術資料排煙設備
- ※参考文献 :
- (一社)日本サッシ協会「わかりやすいサッシ・ドアの性能 BASIS 2021」
排煙設備が必要な理由
煙は火災が起きると必ず出ます。しかも建物という狭く気密の保たれた空間により、近年の火災による事故の多くは煙の害、つまり有毒ガスや視界を遮られることのパニック、また一酸化炭素中毒や酸素不足が主となっています。
そのために、人命の安全確保という点から、排煙設備(排煙口)の設置が義務付けられています。
排煙設備の設置基準
建築基準法施行令第126条の2で火炎のフラッシュオーバー現象の防止、酸欠あるいは有害ガス充満の危険を除くことを目的として、排煙設備の設置が義務付けられています。
フラッシュオーバーとは
物が燃える時には酸素が必要です。ある部屋で火災が発生した時にその部屋の酸素は減っていきますが、炎はより多くの酸素を求めて突然、別の部屋で酸素がたくさんあるところに燃え広がろうとします。この突然燃え広がろうとする現象をフラッシュオーバーと言います。
- 下表の(1)~(4)に掲げる特殊建築 物で延べ面積が500m²を超えるもの
- 階数が3以上で延べ面積が500m²を超える建築物
- 延べ面積が1000m²を超える建築物の居室で、その床面積が200m²を超えるもの
- 窓その他の開口部を有しない居室
耐火建築物または準耐火建築物としなければならない特殊建築物
(建築基準法第6条・第27条・第28条・第35条ー第35条の3、第90条の3関係)
(い) | (ろ) | (は) | (に) | |
---|---|---|---|---|
用途 | (い)欄 の用途に供する階 | (い)欄の用途に供する部分{(1)項の 場合にあっては客席、(5)項の場合に あっては3階以上の部分に限る。}の床 面積の合計 | (い)欄の用途に供する部分{(2)項および(4)項の場合にあっては2階部分に限り、かつ、病院および診 療所についてはその部分に患者の収容施設がある 場合に限る。}の床面積の合計 | |
(1) | 劇場、映画館、演芸場、観覧場、公会堂、集会場、その他これらに類するもので政令で定めるもの | 3階以上の階 | 200m²(屋外観覧席に あっては、1000m²)以上 |
|
(2) | 病院、診療所(患者の収容施設があるものに限る。)、ホテル、旅館、下宿、共同住宅、寄宿舎、その他これらに類するもので政令で定めるもの | 3階以上の階 | 300m²以上 | |
(3) | 学校、体育館、その他これらに類するもので政令で定めるもの | 3階以上の階 | 2000m²以上 | |
(4) | 百貨店、マーケット、展示場、キャバレー、カフェ、ナイトクラブ、バー、ダンスホール、遊技場、その他これらに類するもので政令で定めるもの | 3階以上の階 | 3000m²以上 | 500m²以上 |
(5) | 倉庫、その他これらに類するもので政令で定めるもの | 200m²以上 | 1500m²以上 | |
(6) | 自動車車庫、自動車修理工場、その他これらに類するもので政令で定めるもの | 3階以上の階 | 150m²以上 |
但し、次の一〜五のいずれかに該当する建築物または建築物の部分については、この限りではない。
- 上表(い)欄(2)項に掲げる用途に供する特殊建築物のうち、準耐火構造の床もしくは壁または防火設備で区画された部分で、その床面積が100m²(共同住宅にあっては200m²)以内のもの
- 学校、体育館、ボーリング場、スキー場、スケート場、水泳場またはスポーツの練習場
- 階段の部分、昇降機の昇降路の部分(当該昇降機の乗降のための乗降ロビーの部分を含む)、その他これらに類する建築物の部分
- 機械製作工場、不燃性の物品を保管する倉庫その他これらに類する用途に供する建築物で主要構造部が不燃材料で造られたもの、その他これらと同等以上に火災の発生のおそれの少ない構造のもの
- 火災が発生した場合に避難上支障のある高さまで煙またはガスの降下が生じない建築物の部分として、天井の高さ、壁および天井の仕上げに用いる材料等の種類を考慮して国土交通大臣が定めるもの
排煙口について
- 排煙設備の排煙口、風道その他の煙に接する部分は不燃材料とする。
- 排煙口は防煙区画部分の各部分から水平距離が30m以下となるように天井または壁の上部[天井から80cm(たけの最も短い防煙壁のたけが80cmに満たないときは、その値)以内の距離にある部分をいう。]を設け直接外気に接する場合を除き、排煙風道に直結すること。
- 排煙口には手動開放装置を設け、その操作部分は壁に設ける場合においては床から80cm以上、1.5m以下の高さの位置に、天井から吊り下げて設ける場合は床面からおおむね1.8mの高さの位置に設け、かつ、見やすい方法でその使用方法を表示すること。
- 排煙口は手動開放装置若しくは煙感知器と連動する自動開放装置または遠隔操作方式による開放時に排煙に伴い生ずる気流により閉鎖される恐れのない構造の戸その他これに類するものを設けること。
- 排煙上有効な開口面積を防煙区画部分の床面積の1/50以上とする。
設置義務のある建物建築基準法施行令第126条の2
排煙設備の設置義務のある建物は次の1~4に該当するものです。
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下表の特殊建築物で延べ床面積500m²を超えるもの。
① 劇場・映画館などの興業場・公会堂・集会場など ② 病院・ホテル・旅館・下宿・共同住宅・寄宿舎・養老院・児童福祉施設など ③ 博物館・美術館・図書館など ④ 店舗・展示場・キャバレー・ナイトクラブ・舞踏場・遊技場・公衆浴場・料理店・飲食店など -
階数が3以上(地下階数も含む)で延べ床面積500m²を超える建物。
(高さ31m以下の居室で、床面積100m²以内ごとに防煙壁で区画されたものを除く) - 居室で天井または壁の上部80cm以内の開放できる部分の面積の合計が、その床面積の1/50未満のもの(排煙上の無窓居室)。
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延べ床面積1,000m²を超える建築物で床面積が200m²を超える居室。
(高さ31m以下の部分にある居室で、床面積100m²以内ごとに防煙壁で区画されたものを除く)
自然排煙設備の構造建築基準法第35条 建築基準法施行令第126条の3
1.構造図
排煙口の有効開口面積は防煙区画ごとに、当該防煙区画面積の1/50以上と規定されています。
(So < L×1/50の場合、無窓居室となる)
2.有効開口面積について
排煙口の有効開口面積とは、排煙口とみなされる部分、すなわち、排煙口有効範囲内の排煙口面積をいいます。その面積は、防煙区画ごとに、当該防煙区画面積の1/50以上と規定されています。
純開口面積とは排煙口面積ですが、寸法は内法寸法を使用し、中方立等がある場合はその見付寸法を除きかつ、天井面から下方へ80cm以内にある部分の実開口面積となります。
開口形式やサッシ周りの納まりにより有効開口面積の計算方法が異なりますので、以下に具体的な計算方法を示します。但し、地域により解釈が異なる場合がありま表面処理すので、物件毎に各市・区役所の建築指導課に確認願います。
αの取り方と有効開口
「建築設備設計・施工上の運用指針 2013年版」(日本建築行政会議 編集)では、以下の通り記載されています。
開閉形式 | 回転角 α | 有効開口面積 So |
---|---|---|
回転窓 内倒し窓 外倒し窓 ガラリ |
90° ≧ α ≧ 45° | So = S |
45° > α ≧ 0° | So = α / 45° × S |
注 : いずれも天井面から下方へ80cm以内にある部分とする。
<参考>
出典:ビル用サッシ基礎マニュアル(一般社団法人 日本サッシ協会発行)
「新訂 排煙設備技術基準(昭和53年発行)」(財団法人 日本建築センター 編集)では、以下の通り有効開口の計算式が記載されています。
図3-11 開閉形式によるk
開放形式 | 回転角(θ°) | k | 開 放 |
---|---|---|---|
引き違い・片引き | 1 | ||
上げ下げ | 1 | ||
開き | 1 | 45°以上開くこと | |
たて軸回転 | 1 | 45°以上開くこと | |
横軸回転 倒し 突出し |
90° ≧ θ ≧ 0 | sin θ※ | すべり出しの場合 の上部開口部分は k=1としてよい。 |
ガラリ | 90° ≧ θ ≧ 0 | sin θ |
90°≧θ≧45° のとき近似的に sinθ≒1
45°≧θ≧0°のとき近似的に
sinθ≒ θ45°
として扱うこともある。
【引違いの有効開口】
引違いの場合、有効開口は全幅Lの1/2ではなくbとなる。
スチールサッシ・アルミサッシなどの場合bは狭くなることがあるので注意を要する。