技術資料断熱性

※参考文献 :
(一社)日本サッシ協会「わかりやすいサッシ・ドアの性能 BASIS 2021」

断熱性とは

断熱性とは、熱が移動するのをどれくらい抑えることができるかを表す性能です。また、熱の移動が少ないことを断熱性が高いといいます。
熱は、高温側から低温側に移動し、両側が同じ温度になったとき、移動が停止します。建築物でいえば、天井、壁、床などの材料の中でも熱を通しやすいものと通しにくいものとがあり、これらの材料の選択によって熱移動を最小限に抑えることが大切です。
快適な住生活のために用いられる冷房や暖房の熱は、外気との間にある窓、壁、天井などを通して、対流、ふく射、伝導によって常に移動が行われています。その中でも窓からの熱の移動は、夏は約70%の割合で入り、冬は約50%の割合で流出すると言われ、窓を通しての移動が大きなウエイトを占めます。従って省エネルギー効果を高める上で、サッシの断熱性の向上は最も重要な要素となります。
サッシの断熱性の測定は、実験による測定JIS A 4710(建具の断熱性試験方法)とJIS A 2102(窓及びドアの熱性能―熱貫流率の計算)による計算法があります。

断熱性の試験方法

断熱性の試験方法

JIS A 4710(建具の断熱性試験方法)に、サッシ・ドアセットの断熱試験方法が規定されています。

断熱性の試験方法 概略図

試験手順(概要)

  1. 熱伝導率が既知の校正板を取付け、高温側と低温側の温度差(20±2)Kに設定します。
  2. 合計表面熱伝達抵抗Rs, tが0.17±0.01(m²・K/W)となるようにファンとヒーターの出力(風量)を調整し、試験体以外からの通過熱量(Φsur、Φedge)を予め測定します。
  3. 校正板と試験体を取り替え、ファンの出力を変えずにヒーターの出力調整により、高温側と低温側の温度差(20±2)Kの安定した状態となるようにします。
  4. 次にファンとヒーターが供給熱量から、試験体以外からの通過熱量を減算し熱貫流率Umを求めます。
  5. 最後に標準化熱貫流率Ustを算出します。
標準化熱貫流率Ust算出 計算式
Rs,t
測定された合計表面熱伝達抵抗(高温側及び低温側の表面熱伝達抵抗の和)
Um
測定された試験体の熱貫流率

備考

出窓、天窓の断熱性試験方法がJIS A 1492(出窓及び天窓の断熱性試験方法)に制定されています。

断熱性の等級と性能(判定基準)

JIS A 4702:2021(ドアセット)・JIS A 4706:2021(サッシ)の規定により下表の等級と性能(判定基準)が決められています。

K(ケルビン)は絶対温度を表す単位です。
性能項目 等級 標準化(された)熱貫流率 判定基準
断熱性 H-1
H-2
H-3
H-4
H-5
H-6
H-7
H-8
4.7W/(m²・K)
4.1W/(m²・K)
3.5W/(m²・K)
2.9W/(m²・K)
2.3W/(m²・K)
1.9W/(m²・K)
1.5W/(m²・K)
1.1W/(m²・K)
標準化(された)熱貫流率が等級との対応値以下でなければならない。

熱貫流率とは、

窓の内外の環境温度差が1°Cあるときに、単位時間あたりに窓の面積1m²を通過する 熱量をワット(W)で表したものを「熱貫流率(U値)」といい、数値が小さいほど断熱性に優れていることを表します。単位は「W/(m²・K)」です。

熱貫流率 概念図

サッシ・ドアセットの断熱性は、建築物の地域性・立地条件・居住環境等により選定します。
選定の目安には、「省エネ法」に規定または推奨された開口部の断熱基準等がありますが、JIS等級では、等級が大きいほど断熱性が高いことを表します。

断熱性の等級と性能 概略図01
断熱性の等級と性能 概略図02

注意事項

  • 管轄する官公庁の仕様として、サッシ・ドアセットなどの性能を定めている場合がありますので、確認することが必要です。
  • サッシでは、ガラスの占める面積が大きいため、必要な断熱性能に適合したガラスを使用することが大切です。
  • 風速によって違う熱損失
    部屋の内外の温度差が同じでも、風速が増すと、窓から逃げる熱量が増えます。
  • ガラス厚さについて
    同一種類のガラスで比較すると、ガラス厚さを変えても断熱性はほとんど変わりません。
  • 断熱性を向上させるため、サッシを取り付ける躯体の断熱およびサッシと躯体間の断熱を配慮してください。
ビルの納まり例 概略図
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