技術資料水密性

※参考文献 :
(一社)日本サッシ協会「わかりやすいサッシ・ドアの性能 BASIS 2021」

水密性とは

水密性とは、雨を伴った風のときに雨水の浸入をどれくらいの風圧まで防げるかを表す性能です。
サッシ・ドアセットが風雨にさらされたとき、室内に雨水が浸入することは好ましくありません。水密性は、雨による浸水を防ぐ上で大切な性能であり、建物の立地条件により、風雨の程度は異なるので、条件にあった性能を持ったサッシ・ドアセットを選ぶ必要があります。
水密性は、サッシ・ドアセットが風雨にさらされ た状態で面積1m²当たり、どれくらいの風圧まで雨水の浸入を防げるかを基準とした等級で表し、風圧の単位はPaで表します。

窓に雨風が吹き付けるイメージイラスト

水密性の試験方法および性能

JIS A 1517に、建具の水密性試験方法が規定されています。試験方法は下図のように圧力箱にサッシ・ドアセットを取り付け、1分間当たり4R/m²の水を噴霧し脈動圧を10分間加え、その間のサッシ・ドアセットからの漏水状況を観察します。

水密性試験 状態図
単位 : Pa
等級脈動圧
W-1 W-2 W-3 W-4 W-5
中央値 100 150 250 350 500
上限値 150 225 375 525 750
下限値 50 75 125 175 250
周期(S) 2
水密性試験 グラフ(圧力差/時間)

雨水浸入の要因と対策

雨水の浸入の要因は、基本的に下記に大別できます。水密性を必要とする設計に当たっては、各々の雨水の浸入の要因について対策を考慮しておかねばなりません。

雨水浸入の要因 対策
重力 目地内に下方に向かう経路があると雨水はその自重で浸入する
雨水浸入の要因 重力 解説図

目地を上向きに傾斜させる

高さのある水返しを設ける

雨水浸入の対策 重力 解説図
表面張力 表面を伝わって目地内部へ回り込む
雨水浸入の要因 表面張力 解説図

水切りを設ける

雨水浸入の対策 表面張力 解説図
毛細管現象 微妙なすきまがあると、水は内部へ吸収される
雨水浸入の要因 毛細管現象 解説図

エアポケットとなる空間を設ける

すきまを大きくする

雨水浸入の対策 毛細管現象 解説図
運動エネルギー 風速などで、水滴がもっているエネルギーによって内部にまで浸入する
雨水浸入の要因 運動エネルギー 解説図

迷路を設けて運動エネルギーを消耗させる

雨水浸入の対策 運動エネルギー 解説図
気圧差 建物の内外に生ずる気圧差による空気の移動で雨水が浸入する
雨水浸入の要因 気圧差 解説図

内外の気圧差をなくす

雨水浸入の対策 気圧差 解説図

水密性の等級と性能

JIS A 4702:2021(ドアセット)・JIS A 4706:2021(サッシ)に水密性による等級と性能(判定基準)が下表のように規定されています。

性能項目 等級 圧力差 判定基準
水密性 W-1
W-2
W-3
W-4
W-5
100Pa
150Pa
250Pa
350Pa
500Pa
加圧中JIS A 1517に規定する次の状況が発生しないこと。
(a)枠外への流れ出し
(b)枠外へのしぶき
(c)枠外への吹出し
(d)枠外へのあふれ出し

選定の目安

サッシ・ドアセットの水密性等級は、建築物の地域性、立地条件、使用条件などから判断し、それぞれに建築設計者が決定することになっています。

W-1 W-2 W-3 W-4 W-5
使用場所の目安

市街地住宅

市街地ビル

高層・強風地域用

等級は、過去の気象データを見ると、一般的に風が強いと雨が少なく、雨が多いと風が弱い、という傾向が見られるため(風、雨の同時性の頻度が少ない)、耐風圧性の風圧力より低く設定されています。
サッシの等級別出荷比率から見ると、木造用住宅サッシの場合の、水密性は、一般的にW-3等級級で、ビル用サッシの場合は、一般的にW-5等級です。

注意事項

  • 各官公庁及び各地方監督官庁の仕様として、サッシ・ドアセットなどの性能を 定めている場合がありますので、確認することが必要です。
  • 風当たりの強い立地条件(超高層の谷間、崖縁、海岸縁など)の建築物については、前述の目安より等級が高いものを使用してください。
  • 暴風雨の多い地域の住宅については、雨戸などを併用してください。
  • サッシ・ドアセットなどの枠と仕上げ材及び躯体との取り合いは、水密保持のためのシール施工を確実に行ってください。

サッシの水密構造

下枠内に水を溜める構造(水頭式)

この形式の場合は、風圧力に押されての経路で下枠内に水が浸入します。下枠内にある程度の水が溜まるの部分では水の重力で浸入水を押し返そうとする力が働き、バランスをとります。

の部分に溜まる水は、漏水ではありません。

下枠内に水を溜める構造(水頭式) 解説図

下枠内に水を溜めない構造(等圧式)

この形式の場合は風圧力の大小による 水位の変化がなく一定で、水位は外レールの高さだけ溜まります。水位線より上の部分に気密材を設け、気密材を境にした室外側(図の斜線部分)が外気圧と等気圧になるように設計され、外気圧内の範囲に水の動きを封じ込めた構造で、高い水密性が得られます。

下枠内に水を溜めない構造(等圧式) 解説図

等気圧理論応用構造

かまちの室内側に気密材を設け、かまちの外部側は枠と共同で雨返しのみの 構造とし、の部分に外気圧を導入しています。
かまちと枠の空間を外気圧と等気圧にすることにより、雨滴のもつ運動エネルギーが雨返し部分で封殺されて高い水密性が得られます。
この原理を等気圧理論といい、たて軸回転窓以外に、すべり出し窓、内倒し窓、開き窓などにも応用されています。

等気圧理論応用構造 解説図
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