長期優良住宅認定制度
これからの住宅のスタンダードとなりえる長期優良住宅、および認定制度の概要について解説します。
長期優良住宅認定制度が制定された社会的背景から、新築向けの長期優良住宅の概要・基準、最新の改正内容まで網羅的に紹介しています。
さらに後半では、長期優良住宅認定制度を適用することでのメリットについても触れており、長期優良住宅認定制度について深く知ることができる記事内容になっています。
長期優良住宅認定制度の経緯
長期優良住宅認定制度とは「長期にわたり良好な状態で使用するための措置が講じられた優良な住宅の建築・維持保全に関する計画を長期優良住宅の普及の促進に関する法律に基づき認定するもの」と、国土交通省の資料に記載されています。
これまでの経緯としては、以下のようになっています。
- 2009年(平成21年)6月4日~ 新築を対象とした認定が開始
- 2016年(平成28年)4月1日~ 既存住宅の増築・改築を対象とした認定が開始
- 2022年(令和4年)10月1日~ 既存住宅について建築行為を伴わない認定が開始
簡潔に言い換えると、長期に渡って安心して住み続けることができる住宅の設計および建築・維持保全の規定を定めたもので、その規定に則って認定を受けることで各種メリットを受けることができる制度です。
なお、この長期優良住宅認定制度が制定された背景としては、2006年(平成18年)6月に制定された「住生活基本法」、同年9月に制定された「住生活基本計画」によるものです。
これにより、戦後、”住宅量の確保を目指してきた 政策”が”質の確保へ転換する政策”へ変わり、長く住み続けることができる住宅の普及によって資産価値が長期にわたり維持され、価値の評価を受けることで国の経済全体的に「ゆとり」を生み出す、 として期待されています。
このような過程から、長期間安心して暮らすための具体的な要件を満たした住宅を「長期優良住宅」とし、さらに所管行政庁が認定することで各種優遇を受けることができる制度ができあがりました。
●長期優良住宅の認定累積戸数
参照:一般社団法人 住宅性能評価・表示協会 | 長期優良住宅認定制度の概要について(新築版)
長期優良住宅認定制度は、2009年(平成21年)開始以来、順調に累積でも戸数を伸ばしており、認定を受けた住宅は令和3年度時点で累積135万戸を突破しています。
年間では約10万戸前後を推移しており、一般戸建ての着工数が約40万戸であることから、新築戸建ての約4分の1が長期優良住宅となっている計算です。
長期優良住宅認定制度の概要
「長期優良住宅」とは、「一戸建ての住宅」「共同住宅等」それぞれに適用されますが、大きく分けて以下の5つ(A〜E)の措置が講じられている住宅のことを指します。
参照:一般社団法人 住宅性能評価・表示協会 | 長期優良住宅認定制度の概要について(新築版)
●長期優良住宅(新築)の認定基準
長期優良住宅の認定を受けるためには、一戸建て・共同住宅ともに各々の以下の基準を満たす必要があります。
●令和4年度の改正内容
2022年(令和4年)10月1日の改正の主要概要は以下の通りです。
【主な変更点】
- 建築行為を伴わない既存住宅の認定制度の創設
- 省エネルギー対策の強化
- 壁量規定の見直し
- 共同住宅等に係る基準の合理化
これまで既存住宅については、一定の性能を有するものであっても、増改築行為を行わない限り認定を取得することができませんでした。
しかし優良と認定できる既存住宅については、増改築を行わずとも維持保全計画のみで認定が取得できるように変更されました。
また省エネルギー対策の強化では、断熱性能について変更がありました。
長期優良住宅の認定基準を、これまでの住宅性能表示の断熱等性能等級4から、ZEH水準(住宅性能表示の断熱等性能等級5)に引き上げました。
そして省エネ化(太陽光発電システムの設置など)で重量化した建築物の構造安全性を確保するため、同時に必要な壁量の基準の見直しも行っています。
共同住宅については、分譲住宅を想定した基準を見直し、維持管理・更新の容易性に係る専用配管の基準を区分所有住宅以外に適用しないなど、賃貸住宅の実態に合わせる変更内容です。
また、共同住宅等の面積基準についても「55㎡」から「40㎡以上」に原則を合理化していている点などが変更点となっています。
長期優良住宅認定制度を受けるメリット
長期優良住宅の認定を受けた住宅(新築)は、条件に応じて各補助金・税制優遇・金利優遇・地震保険の割引などを受けることができます。
●税制優遇の特例措置
2024年3月31日までに新築された住宅で、長期優良住宅認定を受けることで(戸建て・マンション)、以下のような優遇措置が適用されます。
税金の種類 | メリット |
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登録免許税 |
税率の引き下げ
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不動産取得税 |
課税標準からの控除額の増額
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固定資産税 |
減税措置(1/2減額)適用期間の延長
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●フラット35・フラット50の金利引き下げ
長期優良住宅を取得・建築する場合、フラット35・フラット50において金利の引き下げ等の措置を受けることができます。
フラット35S(金利Aプラン)及び維持保全型 |
フラット35の借入金利
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フラット50 |
返済期間の上限が50年間。
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●地震保険の割引
長期優良住宅は、一般住宅に比べて耐震性能が高いことから、所定の確認資料を提出することで耐震等級に応じた地震保険の割引を受けることができます。
長期優良住宅(新築)の認定を受けた場合は、地震保険を取り扱う損害保険代理店または損害保険会社にお問合せください。
耐震等級割引 |
住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)に基 づく耐震等級(倒壊等防止)を有している建物であること
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免震建築物割引 |
住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)に基 づく免震建築物であること
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●地域形グリーン化事業(新築一戸建て)
子育て世帯・若者夫婦世帯※による高い省エネ性能を有する新築住宅や長期優良住宅、住宅の省エネ改修に対して支援される制度です。
子育て世帯:18歳未満の子を有する世帯。若者夫婦世帯:夫婦のいずれかが39歳以下の世帯
事業概要・補助金額などの条件は年度によって変動するため、制度自体の詳しい概要はこちらからご確認ください。
支援対象 |
地域の中小工務店のグループの下で行われる省エネ性能に優れた木造住宅の新築 |
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●長期優良住宅化リフォーム推進事業(リフォーム)
長期優良住宅化リフォーム推進事業は、良質な住宅ストックの形成および子育てしやすい生活環境の整備等を図るリフォーム工事を推進する制度です。
すなわち、既存住宅に長く住み続けられるよう、住宅性能(耐震性や断熱性など)を向上させるリフォーム工事に対して補助金が出る制度ということです。
また、三世代で同居するためのリフォーム工事費やインスペクション費用も補助対象です。
一定要件を満たすリフォーム事業を公募し、「安心R住宅」制度に係るものについても登録団体による公募・事前採択の対象となります。
事業概要・補助金額などの条件は年度によって変動するため、制度自体の詳しい概要はこちらからご確認ください。
・事業タイプが3種類
長期優良住宅化リフォーム事業には、工事の内容や範囲によって3種類の評価方法があります。
それぞれの評価方法では、クリアすべき性能の範囲も異なるのと同時に、補助限度額が変わります。
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評価基準型
性能項目のうち、劣化対策、耐震性、省エネルギー対策について評価基準に適合するもの。 -
認定長期優良住宅型
性能向上リフォームを行い、所管行政庁から長期優良住宅(増改築)の認定を受けるもの
(すべての性能項目で認定基準に適合することが必要) -
提案型
基準では評価できない提案について、先導性・汎用性・独自性を有すると認められるもの。
事前採択タイプのみに設定されている
・補助対象となる条件
参照:TDYリフォーム情報サイト | 住宅省エネ2024キャンペーン 給湯省エネ2024事業
1つ目として、リフォーム工事前にインスペクションを行うとともに、工事後に維持保全計画及びリフォームの履歴を作成することがあげられます。
2つ目にリフォーム工事後に、特定性能向上工事に関する性能基準を満たす性能を有することが必要です。
(構造躯体等の劣化対策・耐震性・省エネルギー性は必須項目)
最後に、性能向上工事のいずれかの「性能向上に資するリフォーム工事」、「三世代同居対応改修工事」「子育て世帯向け改修工事」「防災性の向上・レジリエンス性向上改修工事」のうち1つ以上行うことで長期優良住宅化リフォーム推進事業の適用対象となります。
●住宅ローン減税の借入限度額を最大化
長期優良住宅の認定を受けることで、住宅ローン減税での借入限度額を最大化されます。
2023年(令和5年)までは長期優良認定住宅は5,000万円まで控除される一方、ZEHでは4,500万円、省エネ基準適合住宅では4,000万円となっています。
2024年(令和6年)以降も同様の傾向が続くため、住宅ローンの借入限度額を最大化させるためには長期優良住宅の認定が必要になります。
なお、令和4年度税制改正(2021年12月)で、2022年以降4年間の住宅ローン減税の内容が決定していましたが、2024年度(令和6年度)の税制改正で借入限度額の金額が一部変更になりました。
・2024年からの変更点
省エネ基準に適合していない住宅の場合、住宅ローン控除の適用を受けることができません。
・2024年(令和6年度)税制改正での変更点
子育て世帯・若者夫婦世帯が令和6年に入居する場合、令和4・5年入居の場合の水準(長期優良認定住宅:5,000万円、ZEH水準省エネ住宅:4,500万円、省エネ基準適合住宅:4,000万円)を維持します。
新築住宅の床面積要件を40㎡以上に緩和する措置(合計所得金額1,000万円以下の年分に限る)について、建築確認の期限を令和6年12月31日(改正前:令和5年12月31日)に延長されています。