技術資料表面処理
- ※参考文献 :
- (一社)日本サッシ協会「わかりやすいサッシ・ドアの性能 BASIS 2021」
アルミニウムの表面処理における品質
JIS A 4706:2015(サッシ)において枠および障子材料の表面処理は、JIS H 8602:2010(アルミニウムおよびアルミニウム合金の陽極酸化塗装複合皮膜)の規定に基づく、陽極酸化塗装複合皮膜処理を施します。
その処理方法は、まず硫酸陽極酸化処理(皮膜)を施し、更に艶有りまたは艶消し熱硬化性アクリル樹脂塗料を電着塗装(塗膜)し高温焼付乾燥をする、というものです。この方法により生産された製品は塗膜の均一性がよく、優れた耐候性や耐食性を有します。
表面処理仕様と品質
1 : 陽極酸化塗装複合皮膜の仕様
JIS H 8602:2010(アルミニウムおよびアルミニウム合金の陽極酸化塗装複合皮膜)による。
① 複合皮膜種類は、下表に示す種類に区分されます。
複合皮膜の種類
種類 | 参考 |
---|---|
適用環境 | |
A1 | 過酷な環境で、かつ、紫外線露光量の多い地域の屋外 |
A2 | 過酷な環境の屋外 |
B | 一般的な環境の屋外 |
C | 屋内 |
適用環境において、“過酷な環境”とは腐食・劣化の激しい地域で海浜および沿岸をいい、“一般的な環境”とは、工業地域、都市地域および田園地域をいう。海浜とは、海岸線から300m以内の地域(飛来する海塩粒子の影響が最も激しい地域)をいう。沿岸とは、海岸線から300mを超えて2km以内の地域(飛来する海塩粒子の影響が比較的大きい地域。ただし、南西諸島の島は、海岸線から2kmを超えても、すべてこの区分に入れる。)をいう。工業地域とは、生産活動に伴って、大気汚染物質[硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)、降下ばいじんなど]を発生する地域をいう。都市地域とは、商業および生活活動に伴って大気汚染物質を発生する地域をいう。田園地域とは、大気汚染物質の影響が少ない地域をいう。紫外線露光量の多い地域とは、亜熱帯海洋性気候に類似した地域をいう。
② 複合皮膜の性能は下表のとおりです。
複合皮膜の性能
種類 | 陽極酸化 皮膜の厚さ (平均皮膜 厚さ)μm |
キャス 耐食性 |
塗膜の付着性 | 塗膜の 耐溶剤性 |
耐アルカリ性 | 複合耐食性 | 促進耐候性 | |||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
碁盤目 試験 |
沸騰水碁盤目試験 | 紫外線 蛍光 ランプ式 促進 耐候性 試験 |
キャス 耐食性 |
レイティング ナンバ RN |
サンシャインカーボン アーク灯式 促進耐候性試験 |
|||||||||||
沸騰水試験 | 沸騰水 試験後の 碁盤目 試験 |
|||||||||||||||
試験 時間h |
レイティング ナンバ RN |
試験 時間h |
外観 | 試験 時間h |
レイティング ナンバ RN |
試験 時間h |
試験 時間h |
試験 時間h |
外観 | 光沢 保持率 % |
||||||
A1 | 5以上、かつ、各測定 点皮膜厚さが、すべて平均皮膜厚さの80%以上でなくてはならない | 120 | 9.5以上 | 25/25 | 5 | 塗膜にしわ、 割れ、ふくれおよび著しい変色が生じてはならない | 25/25 | 試験前後の塗膜の鉛筆硬度の低下は、JIS K 5600-5-4の6.2に規定する硬度スケールで1単位以下でなければならない | 24 | 9.5以上 | 240 | 120 | 9以上 | 3000 | 著しい変退色および著しいチョーキングが生じてはならない | 75以上 |
A2 | 1500 | |||||||||||||||
B | 72 | 72 | 750 | |||||||||||||
C | 24 | 8 | ー | ー | ー | 250 |
複合耐食性試験は、紫外線蛍光ランプ式促進耐候性試験を行った後、キャス試験を実施する。なお、この試験は、種類Cには適用しない。
2 : 塗装皮膜仕様
標準膜厚仕様は各々下表に示していますが、色調によっては隠蔽性により増膜設定が必要となります。また期待耐用年数は用途、環境(田園、都市、海岸、工業地域、特殊隣接工場)等を考慮し、当事者間の協議の上、設定させていただきます。
特殊仕様(ハイメタリック、低汚染フッ素など)については記載しておりません。引き合い時にお問い合わせください。
塗装皮膜仕様(屋外仕様)
塗料樹脂種 | 塗装仕様 | 期待耐用年数 一般都市 標準仕様 |
||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
乾燥方法 | 光沢仕様 | 色仕様 | 膜厚仕様(μm) | |||||
プライマー | ソリッドおよび メタリック |
クリヤー | 合計 | |||||
アクリル 樹脂塗料 |
170~180°C | 3分艶〜全艶 | 各色 | 5 |
25 30 35 |
ー |
30 35 40 |
5〜7年 |
ウレタン 樹脂塗料 |
160〜170°C | 3分艶〜全艶 | 各色 | 5 |
35 40 45 |
ー |
40 45 50 |
10〜12年 |
フッ素 樹脂塗料 |
160〜170°C (中温) ルミフロンベース |
3分艶〜全艶 | ソリッド 限定色 |
5 |
35 40 45 |
ー |
40 45 50 |
約20年 |
メタリック 限定色 |
5 |
30メタリック 35メタリック 40メタリック |
15 |
50 55 60 |
||||
230〜240°C (高温) カイナー500ベース |
3分艶 | ソリッド 限定色 |
5 |
25 30 35 |
ー |
30 35 40 |
20〜30年 | |
メタリック 限定色 |
5 |
25メタリック 30メタリック 35メタリック |
10 |
40 45 50 |
表面処理標準工程図
陽極酸化塗装複合皮膜仕様


塗装皮膜仕様

