採光・遮光
室内に光を取り込む「採光」は、建築基準法で建物の種類ごとに基準があります。
面積の算定方法などについても解説します。
また反対に、光を遮る「遮光」については一次エネルギー消費量の計算における遮光の考え方や、Low-Eの効果などを解説していきます。
採光
●居室の採光(建築基準法・第十九条および第二十八条)
建築基準法により、居室では採光のための窓を設けないといけない、という規定があります。
また、その居室の開口面積は該当の居室の床面積に対し、以下の割合(5分の1~10分の1)以上の面積が必要となります。
居室の種類 | 割合 | |
---|---|---|
(一) | 幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校又は幼保連携型認定こども園の教室 | 5分の1 |
(二) | 前項第一号に掲げる居室※ | |
(三) | 住宅の居住のための居室 | 7分の1 |
(四) | 病院又は診療所の病室 | |
(五) | 寄宿舎の寝室又は下宿の宿泊室 | |
(六) | 前項第三号及び第四号に掲げる居室※ | |
(七) | (一)の項に掲げる学校以外の学校の教室※ | 10分の1 |
(八) | 前項第五号に掲げる居室※ |
参照: 建築基準法施行令(昭和二十五年政令第三百三十八号)│e-GOV法令検索
法第二十八条第一項の政令で定める居室は、次に掲げるものとする。
- 保育所及び幼保連携型認定こども園の保育室
- 診療所の病室
- 児童福祉施設等の寝室(入所する者の使用するものに限る)
- 児童福祉施設等(保育所を除く)の居室のうちこれらに入所し、又は通う者に対する保育、訓練、日常生活に必要な便宜の供与その他これらに類する目的のために使用されるもの
- 病院、診療所及び児童福祉施設等の居室のうち入院患者又は入所する者の談話、娯楽その他これらに類する目的のために使用されるもの.5cm以上の戸とすること。
・第二十八条の条文(居室の採光及び換気)
建築基準法・第二十八条の条文内に以下のように、居室の採光および換気の規定を記した項目があります。
第二十八条
住宅、学校、病院、診療所、寄宿舎、下宿その他これらに類する建築物で政令で定めるものの居室(居住のための居室、学校の教室、病院の病室その他これらに類するものとして政令で定めるものに限る)には、採光のための窓その他の開口部を設け、その採光に有効な部分の面積は、その居室の床面積に対して、五分の一から十分の一までの間において居室の種類に応じ政令で定める割合以上としなければならない。
ただし、地階若しくは地下工作物内に設ける居室その他これらに類する居室又は温湿度調整を必要とする作業を行う作業室その他用途上やむを得ない居室については、この限りでない。
2
居室には換気のための窓その他の開口部を設け、その換気に有効な部分の面積は、その居室の床面積に対して、二十分の一以上としなければならない。ただし、政令で定める技術的基準に従って換気設備を設けた場合においては、この限りでない。
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別表第一(い)欄(一)項※に掲げる用途に供する特殊建築物の居室又は建築物の調理室、浴室その他の室でかまど、こんろその他火を使用する設備若しくは器具を設けたもの(政令で定めるものを除く)には、政令で定める技術的基準に従って、換気設備を設けなければならない。
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ふすま、障子その他随時開放することができるもので仕切られた二室は、前三項の規定の適用については、一室とみなす。
別表第一 耐火建築物等としなければならない特殊建築物
(い) | (ろ) | (は) | (に) | |
---|---|---|---|---|
用途 | (い)欄の用途に供する階 | (い)欄の用途に供する部分((一)項の場合にあつては客席、(二)項及び(四)項の場合にあつては二階、(五)項の場合にあつては三階以上の部分に限り、かつ、病院及び診療所についてはその部分に患者の収容施設がある場合に限る。)の床面積の合計 | (い)欄の用途に供する部分の床面積の合計 | |
(一) | 劇場、映画館、演芸場、観覧場、公会堂、集会場その他これらに類するもので政令で定めるもの | 三階以上の階 | 二百平方メートル(屋外観覧席にあつては、千平方メートル)以上 | |
(二) | 病院、診療所(患者の収容施設があるものに限る。)、ホテル、旅館、下宿、共同住宅、寄宿舎その他これらに類するもので政令で定めるもの | 三階以上の階 | 三百平方メートル以上 | |
(三) | 学校、体育館その他これらに類するもので政令で定めるもの | 三階以上の階 | 二千平方メートル以上 | |
(四) | 百貨店、マーケット、展示場、キャバレー、カフェー、ナイトクラブ、バー、ダンスホール、遊技場その他これらに類するもので政令で定めるもの | 三階以上の階 | 五百平方メートル以上 | |
(五) | 倉庫その他これに類するもので政令で定めるもの | 二百平方メートル以上 | 千五百平方メートル以上 | |
(六) | 自動車車庫、自動車修理工場その他これらに類するもので政令で定めるもの | 三階以上の階 | 百五十平方メートル以上 |
・採光の有効面積の算定方法(第二十条)
前述で解説した居室の窓その他の開口部で採光に有効な部分の面積は、「当該居室の開口部ごとの面積に、それぞれ採光補正係数を乗じて得た面積を合計して算定するものとする」とする規定があります。
すなわち、居室の開口部の面積を単純にそのまま使うのではなく、採光補正係数を掛けて算出された面積を合算して計算をします。
ただし、国土交通大臣が別に算定方法を定めた建築物の開口部については、その算定方法によることができます。
▼採光補正係数
採光補正係数とは、それぞれ用途別の居室における床面積に対して、基準以上の開口面積を設ける必要がありますが、この開口面積を求める際に必要な数値となります。
・採光上有効な開口部の面積=窓の面積 × 採光補正係数
また、採光補正係数はその建物の用途地域によって異なります。
用途地域 | 計算式 |
---|---|
【住居系地域】 第一種低層住居専用地域 第二種低層住居専用地域 第一種中高層住居専用地域 第二種中高層住居専用地域 第一種住居地域 第二種住居地域 準住居地域 又は田園住居地域 など |
D/H×6-1.4 |
【工業系地域】 準工業地域 工業地域 又は工業専用地域 |
D/H×8-1 |
【商業系地域】 近隣商業地域 商業地域 又は用途地域の指定のない区域 |
D/H×10-1 |
- ※D:
- 開口部(窓)の真上にある軒~隣地境界線 / 同一敷地内の他の建築物等までの水平距離
- ※H:
- 窓面の高さの中心線~軒までの垂直距離
採光補正係数の数値は、数値が小さくなるほど大きな窓が必要となります。
一方、採光補正係数の数値が大きくなると、小さな窓でも有効採光面積を満たしやすくなります。
上記の用途地域別の採光補正係数の計算式をみると、工業系・商業系地域よりも住宅系地域の方が採光補正係数が小さくなりやすい傾向があり、住宅系地域の方がより大きな窓を必要とする傾向があると言えます。
また、採光がよく取れる天窓の場合は、採光補正係数は原則「3.0」で計算されます。
ただしライトウェル(光井戸)と呼ばれる、天井を見上げた時に井戸のような構造で上部に天窓がある場合は、採光補正係数の計算が別途必要となります。
なお、バルコニーなど窓の屋外側に開放空間がある場合、その空間の奥行きに応じて採光補正経係数が低減されます。
遮光
●一次エネルギー消費量における遮光(日よけ効果係数)について
参照: 平成28年省エネルギー基準(住宅/非住宅)日よけ効果係数算出ツール
昨今、温暖化が進んでおり、特に夏の暑さは昔に比べて厳しくなっています。
省エネ基準にもなっている一次エネルギー消費量の計算ツールにおいても、日よけがあることによる冷房への負荷軽減を測定する指標があります。
日よけによる日射遮蔽効果を「日除け効果係数チャート」の読み取り値を用いることで反映していましたが、平成25年基準策定の際に地域区分や暖冷房期間が変更されたのを受けて新基準に対応した日よけ効果係数を算出するためのツールが提供されています。
「建築物のエネルギー消費性能に関する技術情報」の中で平成26年10月に公開されている日よけ効果係数算出ツールは、PAL(新年間熱負荷係数)やBEI(=設計一次エネルギー消費量/基準一次エネルギー消費量)の計算に、日よけの日射遮蔽効果を反映するための係数(日よけ効果係数)を算出することができます。
日よけのある窓への日射量の期間積算値を、日よけがない窓の同様の入射日射量の期間積算値で除し、日よけの効果を数値化します。
夏期(冷房期)と冬期(暖房期)に分けて計算し、窓の面積や庇の長さなどを入力し計算します。
●窓におけるLow-Eの効果
・Low-Eとは
参照: https://www.ykkap.co.jp/business/products/window/glass_lowe_thermal
参照: https://www.ykkap.co.jp/consumer/satellite/products/articles/glass_select/lecture2/
Low-Eとは、「Low Emissivity」(=低放射)の略語で「ローイー」と読む、建築の窓ガラスで用いられる一般用語です。
複層・トリプルガラスに「Low-E(低放射)膜」といわれる特殊な金属膜(酸化錫や銀)をコーティングしたガラスのことです。
複層ガラスの内側にコーティング
Low-E複層ガラスと魔法瓶は断熱構造がそっくりになっており、その高い保温性を作り出すポイントになっています。
また、一般的なガラスが放射率0.85程度に対し、Low-Eガラスは放射率が0.1以下になります。
高い断熱性能と日射遮蔽性能を両立し、夏は涼しく、冬は暖房熱を外へ逃がしにくく、西日対策や紫外線による色あせ防止にも効果的です。
・遮熱タイプと断熱タイプの違い
参照: https://webcatalog.ykkap.co.jp/iportal/cv.do?c=11819650000&pg=8&v=YKKAPDC1&d=pro
Low-Eガラスには大きく分類して2種類のタイプ、「遮熱タイプ」と「断熱タイプ」があります。
「遮熱タイプ」は断熱しながら、⽇射熱を遮り室内を涼しく保つことに向いています。
「断熱タイプ」は断熱しながら、太陽の暖かさをよく取り込みます。
窓の位置や周囲の状況、その⼟地の気候に対応できるよう、このように2つのタイプを用意しています。
・夏における日射熱の効果
Low-Eガラスは、紫外線を70%以上遮断します。
紫外線領域の吸収性能が高いため、紫外線を遮断して大切な家具やカーペットを日焼けによる退色、変色の進行を抑えます。
しかし、昨今の夏は暑さも厳しくなっており、紫外線を遮断しても、室内が暑くなることが想定されます。
夏の住まいが暑くなるもっとも大きな原因は、窓から入ってくる日差しの熱(日射熱)です。
参照: https://webcatalog.ykkap.co.jp/iportal/cv.do?c=11819650000&pg=8&v=YKKAPDC1&d=pro
日射熱が室内に流入してくるのを防ぐためには、シェードなどの併用をおすすめしています。
窓の外側で日差しを遮ることで室内に流入する日射熱も大幅に遮断できます。
・方位による使い分け
参照: https://www.ykkap.co.jp/consumer/satellite/products/articles/glass_select/lecture2
https://webcatalog.ykkap.co.jp/iportal/cv.do?c=11819650000&pg=8&v=YKKAPDC1&d=pro
Low-Eガラスには、さらに「日射取得型」「日射遮蔽型」があります。
「日射取得型」は陽射しをたっぷりと取り込み、暖かく快適に暮らすのに向いています。
「日射遮蔽型」は、日射を取り込まず断熱性を優先する場合に向いています。
各方位ごとにおすすめの設置方法をご紹介します。
東 | 日射遮蔽型 |
---|---|
西 | 日射遮蔽型 |
南 | 日射取得型(庇やオーニングの併用が望ましい) |
北 | 日射遮蔽型 |
地域や周辺状況、設計の考え方により変化する場合もあります
▼東
日射遮蔽型のガラスを使うことで、夏の日射対策および冬の熱の流出対策をします。
▼西
参照: https://webcatalog.ykkap.co.jp/iportal/cv.do?c=11819650000&pg=8&v=YKKAPDC1&d=pro
⻄⽇は日射角度が低く、窓から直接⼊り込んできます。室内からの対策(遮光カーテンやブラインドなど)は熱の流⼊⾃体は避けることができないので、⽇射遮蔽型のガラスで遮ることが、より効果的です。
▼南
参照: https://webcatalog.ykkap.co.jp/iportal/cv.do?c=11819650000&pg=8&v=YKKAPDC1&d=pro
南の太陽⾼度は夏と冬で⾼さが変わります。
夏の⾼い⽇差しは窓に軒やひさし、バルコニーなどが張り出していれば遮ることができます。
冬の低い⽇差しは、ひさしなどに邪魔されずに差し込みますので⽇射取得型のガラスで取り込みましょう。
▼北
⽇射遮蔽型のガラスで冷え込みや結露を抑え、リビングとの温度差を抑えましょう。
エクステリア商品による遮光の効果
●シェード
日差しを遮って、室内温度の上昇を抑え、節電効果を発揮するシェードです。
日よけを使用しない季節や強風時は、簡単にスッキリと収納できます。
その効果は、降り注ぐ太陽光を窓の外で6~8割以上カットし、暑い夏の室内温度上昇を抑えます。
参照: https://www.ykkap.co.jp/business/products/exterior/outershade
夏場に室内へ流入する熱の7割は窓から。アウターシェードは日差しを窓の外で8割以上カット(スタンダードタイプの場合)することで熱の流入を遮り、エアコンなどの電気代を抑える効果も期待できます。
●オーニング
参照: https://www.ykkap.co.jp/business/products/exterior/parasorea
暑さ対策や省エネに適したカラフルなオーニングです。
室外で直射日光を遮るため室内のカーテンなどに比べ日よけ効果が格段に優れています。
自然の風を部屋の中に取り入れ、日差しをコントロールして夏の冷房費を抑える、健康的で開放感あふれる暮らしを実現します。
参照: https://www.ykkap.co.jp/business/products/exterior/parasorea
オーニングの効果としては、日射と赤外放射を大幅にカットし、オーニングの下の体感温度は日なたと比べると最大6℃下がります。
実験地:埼玉 桶川試験場にて9月に測定(気温30℃)。試験測定値であり、保証値ではありません。
さらに、エアコンの稼働率を3分の1にする効果※もあります。
窓面積10㎡の場合
出典:早稲田大学理工学部 木村教授研究室「オーニングの日射遮へい高価に関する研究報告書」
参照: https://www.ykkap.co.jp/business/products/exterior/parasorea
上記の研究によれば、室内側にブラインドやカーテンがあっても、隙間から温められた空気が流入して室温が上昇してしまい、エアコン稼働率は日よけなしの場合の74%にとどまります。
オーニングがついた部屋なら、建物の外側から日差しを遮ることができ、エアコン稼働率は33%にまで下がります。