未来を開く窓

クリエイティブディレクション・テキスト:
鈴木啓太(PRODUCT DESIGN CENTER)

窓は、再び人と自然をつなぐ存在へ

スペインが誇る名建築家、アントニ・ガウディ。彼の建築を彩る光、風、音をテーマにした窓をヒントに、未来の豊かな暮らしを考えました。
本展では、自然環境と呼応する様々な機能や造形を持つ窓を、最先端の3Dプリンティング技術で実現しています。 近代化の名のもとに失われてしまった、ガウディ建築に代表される職人たちの手仕事や、人や空間にあわせたカスタマイゼーション。 最新技術によりそれらが再び脚光を浴び、さらに持続可能性などの問題を解消しながらこれからの暮らしに貢献できると確信しています。 最新の研究を行う他業種の企業やイノベーターとの対話を通して作られた、私たちの生活を支え、彩り、豊かにする窓の未来にご期待ください。

SUN AND MOON WINDOW 太陽と月の窓

インスパイアされたのは、ガウディが「コロニア・グエル教会」の窓で採用した開閉機構。この「太陽と月の窓」は、窓の中心に回転軸がデザインされ、地球儀のように窓を自由な角度に動かすことができます。 窓の透過部は、太陽光に反応して色が変化。光の強さに応じて窓の色が濃く変化し、紫外線をカットします。 また木製の窓のフレームは、手仕事で木を彫刻的に加工していたガウディの時代へオマージュを捧げつつ、3Dデータをもとに最新の加工機で木を削り出しました。フレームを壁に固定する窓枠は3Dプリンタで製作しています。 太陽の上昇とともに色づき、太陽が沈むと透明に戻る窓。日中はステンドグラスのような美しい色彩の影が現れ、夜には繊細な月灯りを室内に取り込みます。

デザイン:PRODUCT DESIGN CENTER
協賛・素材協力:MOLp® by 三井化学
協賛・制作協力:前田建設工業株式会社ICI総合センター

風が巡る窓

インスパイアされたのは、ガウディが「カサ・バトリョ」で採用した換気機能。この「風が巡る窓」は、蝶の羽根を模した複雑なメッシュが織りなすジャイロイド構造を用いて、常時換気を可能にしました。 3Dプリントでフレームの内部をストローのようにデザインし、温水や冷水を流し込むことで、室内に取り入れる空気の温度を調節。分離した2つの流路により、寒い日は室温を下げずに、暑い日は室温を上げずに換気と熱交換を両立しています。 設置環境や用途に応じて、粗密の設計を自在にカスタマイズできる点もポイントです。 始まりは孔だったという窓の原点に戻り、開口部の壁とメッシュをつなげることで「壁と窓の中間の存在」を目指しました。

デザイン:PRODUCT DESIGN CENTER
構造設計:Nature Architects株式会社

音の窓

インスパイアされたのは、ガウディが「サグラダ・ファミリア」の塔で採用した、無数の孔が空いた窓による共鳴構造。完成時には内部に吊るされた鐘の音が重なり合うことで、建築全体が楽器のように音を奏でると伝えられています。 このセラミック製の「音の窓」はホーン型の断面形状によって、自然の音や動物の声を拡張し屋内で楽しめます。音を遮断せずに取り込むことで、自然と人とのつながりを生みました。 また破砕したタイルの欠片を好んで使用していたガウディ。今回はリサイクル・セラミックを均一のビーズ状に精製した材料を3Dプリントした後に、陶芸家が色付け。ガウディの意匠と同じく、焼き物ならではの一点一点異なる表情が楽しめます。

デザイン:PRODUCT DESIGN CENTER
協賛・制作協力:AGCセラミックス株式会社 施釉:山田隆太郎

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