1.睡眠は季節ごとに変化する
「春眠、暁を覚えず」という故事にもあるとおり、春になるといつまででも寝ていたい、なんとなく寝足りないと感じる人が多いのではないでしょうか。昼間、陽が差し込む窓辺でウトウトと眠くなって、居眠りを抑えるのに苦労している人も。
夏は夜が短く、さらに暑くて寝苦しいなどの悪条件が重なって睡眠不足になりがち。逆に涼しくなる秋から秋から初冬にかけては、夏の反動もあって睡眠時間が長くなることが多いようです。冬は寒さのために眠りが浅めになって何度も目を覚まし、トイレに立つ回数が増えることもあります。
このように、日々の生活で「睡眠」は欠かせないものですが、睡眠の状態は一年中同じではなく、季節によって少しずつ変化しているのです。
2.なぜ春は眠いの?
春は強い眠気を感じやすい季節。なぜ、春は眠いのでしょうか。
まず、春の気温は15~20℃、湿度は50%前後、暑くもなく寒くもない「人間が心地いいと感じる気候」なので、眠くなってしまいます。また暖かいので屋外での活動量も増え、疲れて眠気やだるさを感じやすいもの。そして卒業や入学、進学、就職など年度替わりの行事が目白押しで、忙しさのために夜間の睡眠時間が不足しがちになることも、寝起きの悪さや昼間の耐えがたい眠気を引き起こしていると考えられます。
さらに冬から春にかけて、体の中では眠気を誘う「メラトニン」というホルモンの分泌状態や、体をコントロールしている自律神経のリズムなどが大きく変化します。新しい状態に慣れるまで体と心の不調を生じ、眠気を感じてしまうこともあるようです。
3.光を利用して睡眠のリズムを
昼間の眠気はつらいし、授業や運転、仕事などをしている最中に眠くなれば、支障を来します。冬型から春型へスムーズに体を慣れさせたいものですが、一番の対策は、ゆっくり眠って体を休めること。夜間に質のいい睡眠をとれば少しずつ体のリズムが整い、昼間はスッキリと過ごせるようになります。
心地よく眠るためのキーワードは「光」。朝起きたらカーテンを開け、しっかり太陽の光を浴びることが大事。ガラス越しでもかまいませんが、天気のいい日は窓を開けて風を入れれば、スッキリ目が覚めます。通学や通勤中も電車の中で窓の外を見て、光を意識するといいでしょう。
睡眠を誘うホルモンのメラトニンは、朝の光を感じてから14~15時間後に分泌を始める性質があるため、ちょうどいい時間に眠気が来て、夜間ぐっすり眠ることができます。
一方夜の光は、同じ明るさでも昼間に浴びるよりも刺激が強いと言われています。寝る時間が近づいたら、物を見るのに苦労しないくらいまでできるだけ照明を落とします。また、テレビやパソコン、スマホなどは少し早めに切り上げ、寝る直前まで液晶画面を見続けないようにしましょう。
4.寝つきやすい環境を整える
眠りやすい環境を整えることも大事。とくに「音」は意外に気になって、寝つきを悪くし、眠りの質を落としてしまうこともあります。踏切が近い、車の通りが激しいなど、外が騒がしいところに住んでいる人や、音に敏感な人は、寝室の窓を二重窓にするといった対策も検討してみてはいかがでしょうか。
また、看板や街頭など外からの光が窓を通して入ってくる場合は、雨戸や遮光性の高いカーテンなどでしっかり遮るようにしてください。
また、寝具を選ぶことも快適な眠りの条件。掛けふとん・敷きふとんは、保温・吸透湿性・放熱性に優れたもの、枕は自分に合った硬さや高さのものを選びます。
春の貪欲な眠気は怠け者だからではなく、体が必要としているもの。「光」の工夫などで質のよい睡眠をたっぷり取り、体を切り替え、すっきりした気分で毎日を過ごしましょう。