第3話 夏バテと窓
「夏バテ」は、「夏まけ」「暑気あたり」などとも言われ、医学領域ではこれという定義がされていません。夏の暑さに起因する自律神経系の乱れによって現れる様々な症状のことを一般的に「夏バテ」と呼んでいます。主な症状としては、全身の倦怠感、思考力低下、食欲不振、下痢、便秘などがあります。今回は、この「夏バテ」について少し考えてみましょう。
「夏バテ」の原因と予防対策
「夏バテ」は、その名のとおり夏に起こるものです。高温多湿な日本の夏、この時期、私たちの身体は、体温調節のため発汗機能を全開にして対処しています。
汗をかくと、身体の中から、水と一緒にナトリウムや塩素といったミネラル(塩分)も出てしまいます。たくさん水を飲んでいても、その塩分を補給しないと、人間の身体は、身体の中の塩分濃度を一定に保とうとして、余分な水分を尿として排出してしまいます。(これを水利尿といいます。)脱水状態になると汗による体温調節ができなくなり、体調を崩してしまいます。
夏の水分補給には、ナトリウムや塩分を0.1~0.2%含んでいるものが理想的です。一般的なミネラルウォーターには、ナトリウムはあまり含まれていません。もし、塩分が足りなければ、塩分の少し濃い食事と水分を一緒にとるとよいでしょう。
反対に、最近はエアコンが普及してきて、冷房病(これも医学領域では正式に定義されていません。)が特にオフィスワークの女性に多く見られるようになりました。これは、自律神経の機能不良のために起こる症状です。
こうした、夏に起こるさまざまな不調に、自律神経が対処しきれなくなると、自律神経失調症を引き起こすことがあります。
熱帯夜などの寝苦しい夜は、暑さに睡眠を妨げられてしまいがちですが、睡眠不足も自律神経の不調をきたす原因になってしまいます。
次の章では、快適な睡眠の取り方について考えてみましょう。
よい睡眠のための基礎知識
睡眠のメカニズムは、"疲れたら眠る"という「恒常性維持機構」と"夜になると眠くなる"という「生体時計機構」の状況に応じて、相互に関連しながら睡眠の質と量およびタイミングを制御しています。
体内時計は、脳にある松果体から分泌される「メラトニン」と体温のリズムが調節しています。周囲が暗くなってくると「メラトニン」の分泌が盛んになり、身体が「休息モード」に変わります。呼吸、脈拍、血圧、体温の低下という生理的変化が生じ、「睡眠モード」へと入っていくのです。
寝つきが悪くて浅い睡眠になってしまう大きな原因は、寝室環境にあると思います。暑くて寝苦しさを感じるときは、うまくエアコンや扇風機を活用することをおすすめします。エアコンや扇風機の風は、間接的に身体に届くようにして、室内に空気の流れをつくるようにするとよいでしょう。
また、軽い運動は適度な疲労感と心地よい睡眠を誘います。布団の上で軽いストレッチなどをして筋肉をリラックスさせると、翌日もスッキリと目覚めることができるので、ぜひ試してみてください。
寝起きをよくする工夫も必要ですね。起きたらまず、明るい光を浴びましょう。明るい光の刺激が体内時計をリセットして、身体が一日の活動を開始します。ちなみに、私の家では窓に電動シャッターがついていて、暗くなると閉まり、朝方明るくなると開くように設定しています。夏バテ気味の方は、寝ている間にしっかり体力を蓄え、朝は朝日をしっかり浴びて、リフレッシュして一日を始めましょう。
まとめ:夏バテにも負けない環境づくりにも窓が一役買います
1日の中で暑さと冷えを何度も繰り返す環境は、自律神経のバランスを崩しやすく、「夏バテ」を引き起こしやすいといえます。「夏バテ」防止のためにも、よい睡眠は欠かせません。ぐっすり眠るための寝室づくりのポイントは、「光」と「音」にありそうです。 窓の取り付け位置を工夫すれば、朝の目覚めに変化を感じられるかもしれません。明るい時間帯に眠るときは、カーテンやブラインドで窓からの光を調節しましょう。厚手のカーテンなら、音も吸収します。防音効果のある窓ガラスやサッシを使えば、さらに静かに眠れそうです。このように、健康的な住まいづくりには、窓が一役買っているのです。
※本コンテンツ上に掲載しているすべての画像および文章等の複写・転用を禁止します。
※YKK APより井川先生に依頼をし、頂いたコメントを編集して掲載しています。