第8話 光と窓 イラスト

地球上の生物は、太陽の光のもとで発生し、進化してきました。私たち人間も、良きにつけ悪しきにつけ太陽の光の影響を受けて生きています。近年は紫外線の悪影響ばかりがクローズアップされていますが、太陽からもたらされる恩恵もまた、忘れてはならないものです。
住まいを考えるとき、「暗いほうがいい」という人はあまりいません。やはり、「明るくて開放的な家に住みたい」という人が多いでしょう。実際、住宅では採光性や建物の向きが重要視されています。それだけ人間が明るさを必要としているからだと言えます。そこで今回は、太陽の光や電気による照明など、「光」と健康の関係について考えてみましょう。

太陽の「良い光」と「悪い光」

そもそも「光」とは何でしょうか。我々が「光」といっているものは、電磁波の一種類です。人間の目で見える波長の電磁波を「可視光線」と言い、いわゆる「光」はこの可視光線を指しています。ヒトは情報の80%以上を視覚から得ていますが、それは可視光線=光を通じて入手しているものなのです。
X線、紫外線、電波なども同じく電磁波の一種ですが、これらは人間の視覚で見ることはできません。

紫外線は、可視光線の紫より外にある短い波長の光です。波長は可視光線より短いですが、エネルギーが高いという特性があります。
別名「殺菌光線」とも呼ばれていて、天気の良い日に寝具を干すと、紫外線を受けることによって雑菌やカビなどの細菌が殆ど死滅します。洗濯物はもちろん、まな板など清潔に保ちたいものを太陽の光に当てることは、理にかなっています。紫外線を利用した殺菌装置もあります。紫外線の殺菌効果は、医療の分野や日常の衛生管理で活用されているのです。

ただし、人体にとっては有害な面があります。紫外線は皮膚でビタミンDを合成するので、日光浴が推奨された時代もありました。しかし近年は、日焼けや皮膚の老化、免疫力の低下やガンの誘発など、さまざまな健康被害があることがわかっており、「紫外線はなるべく浴びないほうがよい」とされています。
また、日の当たりやすい場所の壁や床や家具、カーテンの周りなどが変色する“やけ”は、紫外線の影響が大きいのです。

日光不足が身体の変調をきたす原因に!?

紫外線が悪いからといって、明るさをもたらす可視光線まで遮ってしまうのは問題です。朝日を浴びると体内時計がリセットされ、身体が1日の活動を開始します。寝室はもちろん、それ以外の部屋でも明るさは大切です。

たとえば、こんな生活に思い当たることはないでしょうか。仕事は室内で、食事も職場で済まし、帰宅は暗くなってから。運動もあまりせず、休日はひたすら眠る…。このような日光に当たる機会が少ない生活を送っているうちに、不眠や食欲不振など身体の変調をきたすことがあります。

太陽光が不足すると、体内時計が狂って脳内のセロトニンの分泌が悪くなってしまうことがあるのです。セロトニンの働きの鈍化とうつ病は密接な関係があります。セロトニンのもとになる必須アミノ酸のひとつトリプトファンが不足すると、炭水化物を摂取したくなります。ごはんやうどんなど炭水化物をやけにたくさん食べたくなったら、日光不足を疑ってみてください。

住居においては、窓による日射調整が、住環境を良くする重要な意味を持ってきます。私たちが暮らすなかで、日差しの明るさを取り入れることは欠かせません。太陽がもたらす「光」を上手に取り入れながら、日射に含まれる紫外線をなるべく遮断することが、重要であります。手軽な方法では、カーテンで部屋に入る光を調整することが挙げられますが、遮光タイプの窓ガラスや遮光フィルムを活用すれば、紫外線をカットしながら可視光線を取り込むことができます。

紫外線をカットしながら可視光線をとり入れて明るい住まいに。
紫外線をカットしながら可視光線をとり入れて明るい住まいに。

「光」がもたらす視覚の効果

視覚の中でも、色彩は特に食欲を左右します。赤身の刺し身に青葉を添えるとおいしそうに見えるのは、赤と緑は「補色」の関係で、両方の色を引き立たせる働きがあるからです。赤やオレンジという色が“暖色”であるから、この色は温かさや興奮といった印象を一般に与える色です。この色には食欲を増進させる効果もあることが知られています。さらに、赤やオレンジ、黄色など暖色系の色ほど食欲をそそり、見ただけで胃腸の動きを活発にする効果があります。

色彩だけではありません。屋外でバーベキューをしたりお弁当を食べたりすると、いつになくおいしく感じられるものです。空気のせいもあるかもしれませんが、開放感や明るさも、食欲を増進する要素のひとつと言えるのではないでしょうか。また、食品売り場やレストランでは、食材や料理がおいしそうに見えるよう照明が工夫されていますね。
このように「光」は、食欲にも関係が深いのです。ダイニングやキッチンでの食事をもっとおいしく楽しいものにするなら、窓からの光の加減や照明に注目してみるとよいかもしれません。一日の中でも、朝食・昼食・夕食の時間帯では光の環境は変化します。日差しの差し込む向きや明るさによって照明を使い分ければ、料理がもっとおいしそうに見えるでしょう。

また、眠るときにも、「光」は影響しています。赤い色はよい眠りを導いてくれます。寝る前に赤色光を浴びてから寝ると、深い眠りのノンレム睡眠の時間が長くなることが認められています。就寝時の間接照明などに赤色光を取り入れ、そして目覚めたときに太陽の光を浴びられる寝室づくりをしてみてはいかがでしょうか。

開放感や明るさも食欲増進の要素のひとつ。
開放感や明るさも食欲増進の要素のひとつ。

まとめ:明るい暮らしにも窓が一役買います。

明るく開放感のあるお部屋は、ストレスを和らげ、心地よい暮らしをもたらしてくれます。採光性や眺望には、できるだけこだわりたいものですね。窓の位置や大きさ、形を考慮すれば、紫外線や外部からの視線を遮りながらも、光を活かした明るい住まいを手に入れることができます。また、Low-Eガラスの窓ガラスなら、紫外線の透過率を軽減させつつ、明るさをキープ。地域の環境や建物の向きによって窓を上手に選び、日差しのぬくもりと明るさを最大限に活用しましょう。このように、窓は快適な住環境作りに一役買っているのです。

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※YKK APより井川先生に依頼をし、頂いたコメントを編集して掲載しています。

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