第4話 ヒートショックと窓 イラスト

「ヒートショック」という言葉をご存知でしょうか。ヒートは熱、ショックは急激な体調変化を指しています。つまり、急な温度変化で身体の不調が出ることで、主に血圧や脈拍に影響が出ます。寒いところに行くとゾクゾクすることがありますね。これもヒートショックの一種です。
環境温が大幅に変化すると、血管が急激に収縮したり弛緩したりします。血流を増減させて、体温を一定に保つためです。すると、血圧や脈拍に変動が生じますので、心臓に負担をかけてしまうのです。環境や体調によっては、心筋梗塞や脳血管疾患障害などにつながりかねない危険な状態になることがあります。

ヒートショックと生活環境

国の統計によると、交通事故の年間の死亡者数は、約7~8千人です。それに比べ、ヒートショックでの死亡者数は推定1万人を超えています。

近年の住宅は、リビングや子供部屋、寝室等に冷暖房を完備しています。しかし、多くの家では玄関、廊下、トイレ等はあまり冷暖房されていないのが現状ではないでしょうか。リビングと廊下を比べると温度差が6~7℃あります。このような温度差が血圧や脈拍に影響を与え、心臓や血管に大きな負担を与えるのです。

ヒートショックが最も起きやすいのは、冬場の浴室やトイレと言われています。冬場の浴室の温度は低く、水温は約40℃と高い温度ですから、その温度差が大きく身体に熱負担を与えるのです。冬場は特に住宅内の温度差を2~3℃以内に押さえておくことが理想的でしょう。その意味でも、浴室やトイレにも暖房を考える必要がありますね。また、脱衣所も同じです。室内の熱の多くは窓から流出しますから、断熱性の高い窓やカーテンを利用することも効果的です。

昔から「お年寄りには一番湯はいけない」ということが言われていますが、なぜでしょう。一番湯ですと、浴槽のお湯は約40℃。一方、浴室内の温度は、冬場になると外気温に近い約10℃です。ひとり入った後ならば、浴室内も湯気が立ちこめ温度も上がり、ヒートショックの危険性がかなり低くなります。

ヒートショックは、高齢者が家庭内で死亡する原因の約25%を占めています。影響を受けやすい方は、高齢者、高血圧や糖尿病の方、動脈硬化のある方たち。その他、肥満体型や無呼吸症候群などの呼吸に問題のある方も注意が必要です。

住宅内の温度差は2~3℃以内が理想的
住宅内の温度差は2~3℃以内が理想的

ヒートショックを予防する方法とは?

体の中には色々なタンパク質がありますが、ヒートショックプロテイン(熱ショックタンパク質。以下HSPとします)というものがあります。最近の研究では、HSPが免疫機能の制御に関与していることや、ガン予防に関与しているらしいことが言われています。

注目したいのは、HSPが身体の免疫力や心臓血管系の疾患を予防する効果が期待されていること。このHSPを増やすことにより、ヒートショックによる危険も予防できると言えるかもしれません。
また、HSPは細胞を強化する働きがあります。細胞は、活性酸素、熱、紫外線やストレスなどで傷つきますが、HSPは細胞のタンパク質を修復して強化してくれるのです。

HSPはほとんどの細胞に存在していて、体温が1~2℃くらい上がると増えるタンパク質です。つまり、汗が少し出てくるくらいの運動でHSPを増やすことができます。人それぞれで反応は違いますが、1日30分程度の軽いウオーキングで体温を上げることができます。

入浴でも体温が上がります。こちらも個人差はありますが、湯温が約40℃(安全な温度)の状態で体温が1℃上がるのに約13分、炭酸湯にすると約10分かかります。入浴で体温を上げて、その後も体温を維持できるよう保温しているとHSPを増やす効果が期待できるでしょう。湯冷めしないよう、温かくして過ごすとよいと思います。
しかし、高温(42℃以上)で長湯することは危険です。血栓ができやすくなり、のぼせてしまってふらつくなどの症状が出ることがあります。また、熱い湯で体温を2℃以上あげると、血小板が変形して血管がつまりやすくなる恐れがあるとも言われています。HSP入浴法では42℃10分がよいと言われていますが、何度も申し上げたように個人差がありますから、注意が必要かもしれませんね。特に高齢者は気をつけなければならないでしょう。

そして何よりのヒートショック予防法は、室内の温度差を減らす工夫をすることです。ヒートショックの危険を理解した上で、浴室、トイレ、廊下など、室内の温度が低い場所を意識してみましょう。リビングや個室といった、生活の中心となる部屋との大きな温度差を感じたら、暖房の設置や窓辺の改善など、住まいの環境を見直してみてはいかがでしょうか。

少し汗が出るくらいの運動でヒートショックプロテインが増える
少し汗が出るくらいの運動でヒートショックプロテインが増える

まとめ:ヒートショックの軽減にも窓が一役買います

冬の住まいでは、熱の約50%が窓や玄関などの開口部から流出します。せっかく暖房をつけていても、窓から逃げる熱が多ければ、エアコンによる電力消費の増加にも繋がるのです。今ある窓を生かして断熱性の高い窓を設置することも、気軽にできます。居住スペースだけではなく、お風呂場や玄関回りなど、あらゆる開口部に対応。このように窓は、あたたかで身体にやさしい空間づくりにも一役買っているのです。

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※YKK APより井川先生に依頼をし、頂いたコメントを編集して掲載しています。

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