建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律(建築物省エネ法)
日本のエネルギー政策において、住宅・非住宅における省エネは非常に重要な位置付けになっています。
特に住宅分野では今まで任意となっていた部分が必須となってくる等、大きな変化がある分野で、住宅業界でも注目度の高い内容でもあります。
ここでは、建築物省エネ法に定められている基準を解説していくのと同時に、関連した制度について紹介していきます。
建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律(建築物省エネ法)について
建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律(以下、建築物省エネ法)は、建築物におけるエネルギーの消費量が著しく増加していることに鑑み、建築物のエネルギー消費性能の向上を図るため、住宅以外の一定規模以上の建築物のエネルギー消費性能基準への適合義務の創設、エネルギー消費性能向上計画の認定制度の創設等の措置を講じるため、平成27年7月に公布、誘導措置は平成28年4月、規制措置は平成29年4月に施行されました。
●背景・必要性
我が国のエネルギー需給は、特に東日本大震災以降一層逼迫しており、国民生活や経済活動への支障が懸念されている中で、今後より一層のエネルギー消費量の削減が求められています。
エネルギーの消費先としては、産業・運輸部門が減少する中で民生部門のエネルギー消費量は著しく増加し、現在では全体の約1/3を占めており、事業向け建築物や住宅を含む民生部門のエネルギー削減は喫緊の課題となっています。
参照:https://webcatalog.ykkap.co.jp/iportal/cv.do?c=10398760000&pg=22&v=YKKAPDC1&d=pro
●法律の体系
建築物省エネ法の体系は上段に定める条文と、その詳細を説明する省令に分かれています。
この省令では断熱性能など、具体的に建築物に求める性能を建築物エネルギー消費性能基準(以下、性能基準)として明記しています。
省令が定める建築物の性能を計算する方法は、告示として計算方法と仕様基準を定めています。
建築物省エネ法への移行にあたり、住宅の基準に関しては平成25年省エネ基準(以下H25年基準)を継承し大きく変わりませんが、将来の義務化を踏まえ、法体系が大きく変わりました。
参照:https://webcatalog.ykkap.co.jp/iportal/cv.do?c=10398760000&pg=22&v=YKKAPDC1&d=pro
●建築物の省エネに関する法律の変遷について
建築物の省エネに関わる法律は、オイルショックの後に作られた「エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律(以下、省エネ法)」によって定められたのが最初になります。
その中で定められた省エネルギー基準(以下、省エネ基準)が建築物省エネ法にも引き継がれています。
その後、2015年に建築物省エネ法が公布され、今の形での建築物に関する基準が出来上がりました。
最新の性能基準に関しては、建物の断熱性能と一次エネルギー消費量を定めた省エネ法のH25年基準が最新となります。
なお、平成28年省エネルギー基準誘導措置(以下、H28年基準)という指標もありますが、性能基準としてはH25年基準を踏襲しています。
H28年基準では、新たに省エネ基準の説明義務化と適合義務化の内容が追加されており、性能基準という視点ではH25年基準が最新の基準となります。
建築物省エネ法の現行基準について(2023年11月時点)
建築物省エネ法の現行の基準は、対象となる建築物の基準と守るべき性能基準の2つで構成されています。
ここでは住宅および非住宅の全体的な建築物省エネ法の概要をお伝えします。
●対象となる建築物
建築物省エネ法の対象となる建築物は、建物の目的と規模によって変わります。
建築物省エネ法はもともと努力義務として始まりましたが、2017年から大規模建築物に対して適合義務化が始まり、その後さらに2021年に対象を広げています。
2025年には建築物省エネ法が再度改正され、すべての建築物において性能基準への適合が義務化されます。
建築物省エネ法の対象
2017年4月~ | 2021年4月~(現行) | 2025年4月施行予定 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
非住宅 | 住宅 | 非住宅 | 住宅 | 非住宅 | 住宅 | |
大規模(2,000㎡以上) | 適合義務 | 届出義務 | 適合義務 | 届出義務 | 適合義務 | 適合義務 |
中規模 | 届出義務 | 届出義務 | 適合義務 | 届出義務 | 適合義務 | 適合義務 |
小規模(300㎡未満) | 努力義務 | 努力義務 | 説明義務 | 説明義務 | 適合義務 | 適合義務 |
●建築物省エネ法が求める性能基準について
平成25年に省エネ法で定められた性能基準は断熱性能を規定する「外皮性能」と、その建物で消費されるエネルギー量を規定する「一次エネルギー消費量」の2つから成っています。
外皮性能に関しては非住宅がPAL*(パルスター)、住宅がUa値・ηa値で表されます。
消費されるエネルギー量は非住宅・住宅どちらも一次エネルギー消費量です。
省エネ基準よりも厳しい基準として、「誘導基準」と「住宅事業建築主基準(住宅トップランナー基準)」が定められています。
参照:https://webcatalog.ykkap.co.jp/iportal/cv.do?c=10398760000&pg=22&v=YKKAPDC1&d=pro
●誘導基準について
建築物省エネ法の中には、誘導基準が設けられています。
これは性能基準よりも厳しい基準をクリアすることで、建築条件の緩和措置が受けられたり、販売の促進に資する認定が受けられたりします。
以下がその具体例です。
-
性能向上計画認定・容積率特例
誘導基準に適合(性能向上計画認定)すると、容積率の特例(10%の緩和等)を受けることができます。
-
省エネに関する表示制度
省エネ基準に適合すると、その表示をすることができます。
- 〈自己評価ラベル〉:新築と既築が対象
- 〈BELS〉:新築と既築が対象(第三者機関が認定)
- 〈eマーク〉:既築が対象(所管行政庁が認定)
●規制措置について
建築物省エネ法では規制措置として、以下のことが定められています。
-
適合義務
非住宅の特定建築物は、エネルギー消費性能基準への適合義務と、基準適合について判定を受ける義務があります。
-
届出義務
300㎡以上の住宅の新築、増改築に係わる計画は届出義務があります。
-
説明義務
300㎡未満の小規模建築物(住宅・非住宅)では省エネ性能適合可否について建築士から建築主への説明の義務が課せられています。
-
報告義務(トップランナー対象)
- 建売戸建住宅150棟/年以上
- 300戸/年以上の注文戸建住宅
- 1000戸/年以上の賃貸アパートの供給事業者
- (2023年追加)1,000戸/年以上分譲マンション
これらに該当する住宅事業建築主は国交省からの報告を求められた場合、基準の達成状況を報告する義務があります。
●建築省エネ適合性判定および建築確認・説明・検査の概要
建築物省エネ法において、省エネ適合性判定および建築確認・説明・検査について以下の通りに流れを定めています。
参照:https://webcatalog.ykkap.co.jp/iportal/cv.do?c=10398760000&pg=22&v=YKKAPDC1&d=pro
住宅の基準「外皮性能基準」と「一次エネルギー消費量基準」について
ここからは住宅の基準について説明します。
住宅の外皮の熱性能については、H25年基準相当の省エネ水準が引き続き求められます。
- 外皮平均熱貫流率(UA値)ユーエー
住宅の内部から外部へ逃げる熱量を外皮全体で平均した値です。 - 冷房期の平均日射熱取得率(ηAC値) イーターエーシー
入射する日射量に対する室内に侵入する日射熱の割合を外皮全体で平均した値です。
参照:https://webcatalog.ykkap.co.jp/iportal/cv.do?c=10398760000&pg=23&v=YKKAPDC1&d=pro
●「外皮性能基準」と「一次エネルギー消費量基準」の計算について
外皮性能基準と一次エネルギー消費量基準の評価の方法には、「性能基準(計算ルート)」と「仕様基準」の2つがあります。
さらに、「性能基準(計算ルート)」は、「仕様基準」に比べて作業工程が多いため、「簡易計算ルート」「戸建住宅簡易計算ルート」が用意されています。
なお、エネルギー消費性能計算プログラムの気候風土適応住宅対応版、および簡易な評価ルート(モデル住宅法・当該住宅の外皮面積を用いない外皮評価)は、2025年4月に廃止される予定になっています。
参照:一般財団法人 住宅・建築SDGs推進センター | 住宅の省エネルギー基準と評価方 法2023
●標準計算ルート
「標準計算ルート」の外皮基準は、外皮平均熱貫流率(UA値)と冷房期の平均日射熱取得率(ηAC値)を標準計算で求めます。
・外皮平均熱貫流率の計算
外皮平均熱貫流率UAとは、住宅の内部から外壁、屋根、天井、床、及び開口部などを通過して外部へ逃げる熱量を外皮面積全体で平均した値で、下式のように外皮面積全体の外皮熱損失量qを外皮の部位の面積の合計ΣAで除して求めます。
外皮熱損失量qと外皮の部位の面積の合計ΣAは、下式にて求めます。
外皮熱損失量qは各部位の貫流熱損失の合計で、外皮の部位の面積の合計ΣAは各部位の面積の合計です。
参照:https://webcatalog.ykkap.co.jp/iportal/cv.do?c=10398760000&pg=23&v=YKKAPDC1&d=pro
・平均日射熱取得率の計算
冷房期の平均日射熱取得率ηACとは、屋根、外壁、窓等の外皮の各部位から入射する日射量を外皮面積全体で平均した値で、下式のように冷房期の日射熱取得量mCを外皮の部位の面積の合計ΣAで除し、×100して求めます。
日射熱取得量mCと外皮の部位の面積の合計ΣAは、下式のように各部位の合計です。
外皮の部位の面積の合計ΣAは、外皮平均熱貫流率UAで算出した数値と同じです。
参照:https://webcatalog.ykkap.co.jp/iportal/cv.do?c=10398760000&pg=23&v=YKKAPDC1&d=pro
●簡易計算ルート(外皮面積を計算しない方法)
外皮面積の計算が必要なく、各部位(屋根、天井、外壁、開口部、床、基礎など)の熱性能値だけを求め簡易な計算式に代入し計算することで、外皮性能基準である「外皮平均熱貫流率UA」「冷房期の平均日射熱取得率ηAC」と一次エネルギー消費量計算に必要な「暖房期の平均日射熱取得率ηAH」を求めることができます。
「簡易計算ルート」は、住宅全体の断熱性能を数値で評価しますので、断熱性能レベルを知ることができます。
また一次エネルギー消費量も、Webプログラムを使用して評価しますので、「仕様ルート」に比べ設備機器の選択肢の幅が広がります。
外皮性能基準の評価をするのに必要な性能値等を整理すると、以下の表のようになります。
参照:https://webcatalog.ykkap.co.jp/iportal/cv.do?c=10398760000&pg=23&v=YKKAPDC1&d=pro
●戸建て住宅簡易計算ルート(モデル住宅法)
2021年4月からの説明義務制度の創設に伴い、これまでより簡易に省エネ基準の適否を判定できる方法が追加されました。
戸建住宅の評価については、WEBプログラムに加え、手計算で対応できる計算シートが準備されます。
このシートは、市場に流通している戸建住宅の形態を踏まえ、部位別の面積割合について安全側となる固定値が設定されます。
外壁、窓等の部位ごとの熱貫流率等を断熱材及び窓のカタログから転記した上で、簡易な四則演算により外皮基準への適否を判断することができます。
▼簡易計算シートのイメージ
参照:https://webcatalog.ykkap.co.jp/iportal/cv.do?c=10398760000&pg=24&v=YKKAPDC1&d=pro
●仕様ルート
仕様ルートとは各部位によって定められた外皮性能や設備仕様を満たすことにより、エネルギー消費性能基準への適合を評価することができます。
また2023年からは誘導基準の仕様ルートが整備され、それを用いることで次の項目にも仕様ルートが適用できるようになりました。
参照:国土交通省 | 建築物省エネ法 木造戸建住宅の使用基準ガイドブック(2025年 省エ ネ基準適合義務化対応版)
- 住宅ローン減税のZEH水準住宅の基準
- 住宅品確法※1に基づく住宅性能表示制度における断熱等性能等級5※2及び一次エネルギー消費量等級6※3
- 長期優良住宅法※4に基づく長期使用構造等の基準における断熱等性能等級5※2及び一次エネルギー消費等級6※3
- エコまち法※5に基づく認定基準のうち省エネルギー性能に関する基準
- 住宅の品質確保の促進等に関する法律
- 別途、結露防止対策の基準に適合することが必要
- 別途、断熱等性能等級5の基準(結露防止対策の基準を除く)又は誘導仕様基準1(外皮性能)の基準に適合することが必要
- 長期優良住宅の普及の促進に関する法律
- 都市の低炭素化の促進に関する法律
・仕様ルートの計算方法について
仕様ルートでは、外皮(一般部位と開口部)と設備機器について地域区分毎に仕様または性能の基準が定められています。
基準適否の評価は、当該住宅の部位ごとの仕様や性能と照合して行います。
H25年基準では、開口部比率(外皮面積の合計に対する開口部面積の合計の割合)による適用条件があり、仕様ルートを適用できる開口部比率の上限が決められていましたが、H28年基準より上限がなくなり、開口部比率が大きい住宅でも仕様ルートを適用できるようになりました。
それにより開口部を定められた高い性能にすることで、開口部比率の制限がなくなり面積計算をしなくても適否を評価することができます。
参照:https://webcatalog.ykkap.co.jp/iportal/cv.do?c=10398760000&pg=24&v=YKKAPDC1&d=pro
・開口部に関する基準の改正
地域区分毎に、開口部比率の違いにより開口部の熱貫流率(U)及びガラスの日射熱取得率(η)、日射遮蔽の付属部品等の基準が細かく分類されています。
ただし、平成28年4月からは、区分(に)が新たに追加され、開口部比率の上限が撤廃された為、開口部比率の計算をしなくても熱貫流率の基準値を用いることができるようになりました。
参照:https://webcatalog.ykkap.co.jp/iportal/cv.do?c=10398760000&pg=24&v=YKKAPDC1&d=pro
・開口部の熱性能評価
外皮の熱性能計算において、外皮の部位(屋根、天井、外壁、床、基礎)毎に「部位別仕様表」にあげられた仕様に基づく性能値により簡易的に求めることができます。
部位別仕様表とは、「告示第265号 建築物エネルギー消費性能基準等を定める省令における算出方法等に係る事項」の別表第3-第8(木造住宅については第3-第5)と、別途登録制により「部位別仕様表データベース」にて公開している仕様を合わせたものです。
(一社)住宅性能評価・表示協会のホームページから検索できます。
開口部については、仕様毎の熱貫流率(U)(以下「仕様U値」)は、一般社団法人 日本サッシ協会ホームページ内の技術情報「建具とガラスの組み合わせ」による開口部の熱貫流率表に、日射熱取得率(η)(以下「仕様η値」)の値は、国立研究開発法人建築研究所ホームページ内「平成28年省エネルギー基準に準拠したエネルギー消費性能の評価に関する技術情報(住宅)」に示されています。
外壁、屋根、天井、ドアの日射熱取得率ηは、部位別仕様表で求めた熱貫流率Uに係数0.034を乗じて求めます。
▼開口部の仕様例
・開口部の熱還流率(U)と日射熱取得率(η)について
開口部の熱貫流率(U)は開口部の仕様に応じた値(「仕様U値」各社カタログ巻末に一覧表掲載)もしくは、下記①-⑤(試験値または計算値)のいずれかの方法により求めた値を用います。
- JISA4710(建具の断熱性能試験方法)
- JISA1492(出窓及び天窓の断熱性能試験方法)
- JISA2102-1(窓及びドアの熱性能-熱貫流率の計算-第1部:一般)及びJISA2102-2(窓及びドアの熱性能-熱貫流率の計算-第2部:フレームの数値計算方法)に規定される断熱性能計算方法
- ISO10077-1に規定される断熱性能計算方法
- ISO15099に規定される断熱性能計算方法
▼熱還流率(U)の例
参照:https://webcatalog.ykkap.co.jp/iportal/cv.do?c=10398760000&pg=24&v=YKKAPDC1&d=pro
▼日射熱取得率(η)の例
参照:https://webcatalog.ykkap.co.jp/iportal/cv.do?c=10398760000&pg=24&v=YKKAPDC1&d=pro
開口部のη値(日射熱取得率)には、ガラスの種類と中空層、付属部材等で設定されている「仕様η値」と、JIS計算で算出した「計算η値」の2種類があります。
「仕様η値」はH25年基準では、ガラスの仕様のみで規定されていましたが、H28年基準ではガラスの仕様にサッシ・フレームの仕様を考慮したη値を規定しています。
なお、開口部のη値はガラスとサッシ部の面積率を想定して、ガラス単体の日射熱取得率を用いた近似式で規定されています。
サッシの構造が木製又は樹脂の場合は、0.72を乗じた値に、金属及び金属・樹脂複合の場合は、0.80を乗じた値になります。
●一次エネルギー消費量の計算方法について
建築物省エネ法の性能基準は評価対象となる住宅において、①地域区分や床面積等の共通条件のもと、②実際の住宅の設計仕様で算定した設計一次エネルギー消費量が、③基準仕様(平成11年基準相当の外皮と標準的な設備)で算定した基準一次エネルギー消費量以下となることを基本とします。
一次エネルギー消費量は「暖冷房設備」、「換気設備」、「照明設備」、「給湯設備」、「家電等※」のエネルギー消費量を合計して算出します。
また、太陽光発電設備やコージェネレーション設備による創出効果は、自家消費分のみをエネルギー削減量として差し引くことができます。
削減率の計算では家電等のエネルギー消費量は考慮しません
参照:https://webcatalog.ykkap.co.jp/iportal/cv.do?c=10398760000&pg=25&v=YKKAPDC1&d=pro
・性能基準(計算ルート)
性能基準では専用の住宅に関する省エネルギー基準に準拠したプログラム(以降WEBプログラム)を使って計算します。
WEBプログラムでは個別の住宅で使用する機器の性能をもとに計算をして、一次エネルギー消費量の算出ができます。
次に紹介する仕様ルートに比べて、選べる機器の選択肢が広くできます。
・仕様基準
外皮性能と同様に設備機器についても定められた設備と同等以上と評価される設備が求められます。
具体的には地域区分ごとに定められた、次のような設備を選択することで、基準への適合を評価します。
外皮性能と同じく、一次エネルギー消費量にも誘導基準に対応した仕様基準が設けられています。
省エネ基準と関連するそのほかの基準
ここでは省エネ基準と関連するそのほかの基準を紹介します。
国の政策では建築物をより高い省エネ性にするため、認定住宅や補助金などが用意されています。
以下の表は縦軸に断熱性能(Ua値)、横軸に対応する基準を書いています。
※低炭素:認定低炭素住宅
※長期優良:長期優良住宅
参照:https://webcatalog.ykkap.co.jp/iportal/cv.do?c=11606220000&pg=8&v=YKKAPDC1&d=pro
●住宅性能表示制度
住宅性能表示制度の断熱性能等級と一次エネルギー消費量等級は、省エネ基準と大きく関連しています。
住宅性能表示制度は品確法(住宅の品質確保の促進などに関する法律)に含まれる3つの柱の一つです。
その住宅性能表示制度の中にある「温熱環境・エネルギー消費量に関すること」で断熱性能等級と一次エネルギー消費量等級が定められています。
2022年の改定で断熱性能等級は1~7等級まで、一次エネルギー消費量等級は1~6まで設定されました。
現行の建築物省エネ法の性能基準の基となるH25年基準は、断熱性能等級4、一次エネルギー消費量等級4と同等の基準となっています。
住宅性能表示制度について詳しくは、こちらで紹介します。
住宅性能表示制度の記事へ●ZEH(ネット・ゼロ・エネルギーハウス)
ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)とは外皮の断熱性能等を大幅に向上させるとともに、高効率な設備システムの導入により、室内環境の質を維持しつつ大幅な省エネルギーを実現した上で、再生可能エネルギー等を導入することにより、年間の一次エネルギー消費量の収支が概ねゼロ以下とすることを目指した住宅です。
ZEHの基準は次の①~④すべてに適合した住宅です。
②の一次エネルギー消費量の削減量は建築物省エネ法で定める性能基準の一次エネルギー消費量が基準になっています。
ZEHについて詳しくは、こちらで紹介します。
ZEHの記事へ●LCCM住宅
LCCM(エルシーシーエム)とはライフ・サイクル・カーボン・マイナスの略で、住宅の建設時、運用時、廃棄時においてCO2の排出抑制に取り組み、さらに再生可能エネルギーを利用してCO2を排出しないエネルギー創出により、住宅建設時のCO2排出量も含めて、ライフサイクル全体でのCO2の収支をマイナスにする住宅です。
住んでから発生するエネルギー収支をゼロまたはマイナスにするZEHとは違い、建築時に発生するCO2も含めてゼロまたはマイナスにするという点で、より省エネレベルの高い住宅になります。
●HEAT20
HEAT20は住宅を①健康に焦点を充てたNEB(ノンエナジーベネフィット)と②省エネ性に焦点を充てたEB(エナジーベネフィット)に分けて評価する基準です。
地域区分ごとに定められた外皮性能を満たすことによって、最低気温を一定の水準以上(NEB)にしたり、エネルギーの削減率を達成(EB)したりすることを目指す基準です。
新しくできた断熱性能等級との関係性は以下の表の通りです。
- 断熱等級7=HEAT20・G3グレード
- 断熱等級6=HEAT20・G2グレード
5地域を除く
地域別の代表都市と外皮平均熱貫流率
地域の区分 | 1・2地域 | 3地域 | 4地域 | 5地域 | 6地域 | 7地域 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
代表都市 | 札幌 | 盛岡 | 松本 | 宇都宮 | 東京 | 鹿児島 | |
外皮性能水準別 外皮平均熱貫流率UA> [W/(m2・K)] |
平成28年基準 | 0.46 | 0.56 | 0.75 | 0.87 | 0.87 | 0.87 |
G1水準 | 0.34 | 0.38 | 0.46 | 0.48 | 0.56 | 0.56 | |
G2水準 | 0.28 | 0.28 | 0.34 | 0.34 | 0.46 | 0.46 | |
G3水準 | 0.20 | 0.20 | 0.23 | 0.23 | 0.26 | 0.26 |
参照:一般社団法人 20年先を見据えた日本の高断熱住宅研究会 | 住宅シナリオと外皮 性能水準
地域区分別 断熱等性能等級と外皮平均熱貫流率(UA値)
参照:https://webcatalog.ykkap.co.jp/iportal/cv.do?c=11606220000&pg=8&v=YKKAPDC1&d=pro
HEAT20について詳しくは、こちらで紹介します。
HEAT20の記事へ●建材トップランナー制度
・建材トップランナー制度が見直されました(2023年4月1日施行)
トップランナー制度はエネルギーを消費する機械器具が対象でしたが、住宅・建築物の断熱性能の底上げを図ることを目的に、2014年、サッシおよび複層ガラスが対象に追加されました。
従来の制度では2022年度が目標年度となっていましたが、カーボンニュートラルの実現に向けた基準の強化等を目的に見直され、新たな目標年度や目標基準値等が設定されました。
・建材トップランナー制度の対象
主に戸建・低層共同住宅等に用いられる。
- ○断熱材
- ○複層ガラス
- ○サッシ
窓は「複層ガラス」と「サッシ」に分かれています。
・サッシの性能
サッシの性能は、①もしくは②の方法により、ガラスを入れた窓として求めますが、規定された範囲内の試験体※にて代表させて評価することができます。
建築研究所「技術情報」に記載の試験体と同等の性能を有すると認められる範囲を定める基準
- 測定(JIS A 4710 : 2015)
- 計算(JIS A 2102-1 : 2015 及び JIS A 2102-2:2011)
評価に用いる標準ガラス(熱貫流率)が予め設定されていますが、ガラスが特定できる場合はそのガラス(熱貫流率)にて評価することも認められています。
標準ガラス
サッシの種類 | ガラスの熱貫流率 |
---|---|
三層ガラス | 0.82 |
複層ガラス | 1.60 |
単板ガラス | 6.00 |
・該当するサッシ開閉形式
▼対象となる開閉形式
- 引違い
- 上げ下げ
- すべり出し
- FIX
- たてすべり出し
▼対象となるサッシの構造
- アルミ製
- 樹脂製
- アルミ樹脂複合製
- 木製
▼対象とならない形式
上記開閉形式、構造にかかわらず、以下の形式については対象となりません。
- 透湿防水シートとの接合を考慮していないサッシ(RC造用サッシ等)
- 防火設備(防火戸)
- シャッター付一体枠、雨戸付一体枠、面格子付一体枠
・サッシの目標基準値(目標年度:2030年度)
目標基準値は開閉形式毎に決まっています。
区分名 | 目標基準値[W/(m2・K)] |
---|---|
引違い | 2.16 |
上げ下げ | 2.30 |
FIX | 1.87 |
たてすべり出し | 2.06 |
すべり出し | 2.04 |
▼目標基準値の考え方
目標基準値は、2030年以降に新築される住宅に求められる省エネルギー性能から逆算して、2030年に窓に求められる断熱性能(2.08W/(㎡・K))をベースに算出されています。